年代別ビンテージ・ストラト・サウンド概要

UP Date:2020.06.01

「これぞこの年代のビンテージ・ストラトサウンド」と一言で言い切れない程、実はギター毎の個体差があります。またサウンド」音」自体文章で表現するのが難しく、また弾かれる方のピッキングやフィンガリング、使用されるアンプ等によってもその差がかなり出るのも事実です。
お近くのビンテージ・ショップ等に出向いて、実際に手に取ってご自身で弾かれて体感されるのが一番なのですが、昨今価格的にも高くなり、「どんな音がでるのか知りたい!」というだけでは試奏もし難い状況になっております。
よって”ザックリ”と年代毎のビンテージ・ストラトのトーンについて以下にまとめてみました。代表的なトーンのイメージとしてご参考になれば幸いです。


サウンド・キャラクターを前提にした場合の大雑把なビンテージ・ストラトキャスターの区分

  • 54年メイプルNeck
  • 55年~59年メイプルNeck
  • 59年~64年中期ローズNeck(ブラックボビンPU仕様)
  • 64年後半~68年中期ローズNeck(クロスワイヤーのグレイボビンPU仕様と67年ブラックボビンPU仕様)
  • 68年後半~76年
  • 77年~79年
  • 80年~82年初期(”X-1”ブリッジPU仕様)

サウンドを決定する要因を考える上で、一番重要なのは前述の通りネックだと思います。次がピックアップでしょうか・・・私個人の見解としてはこと「ビンテージ・ストラトキャスター」に限定した場合。ネック7割、ピックアップ1~2割、ボディー(材質よりもその重量)&その他1割前後・・・といった割合で効いてくると思っています。

また、これは私の完全な私見ですが、ビンテージ・ストラトのトーンの良し悪しはブリッジPUを中心に見極めて頂きたいと思います。
当店で試奏を終えられたお客様のギターを戻す際にチェックしますと、9割以上のギターがフロントPUのポジションにPUセレクターがセットされています。私はストラトの一番の魅力はブリッジ・ポジションでの攻撃的なアタック感のあるサウンドだと常日頃より思っています。
フロントPUに関しては、高さセッティングがちゃんと調整されていて、音がコモッたり揺れたりしなければ「気持ち良い音」が出るに決まっていると思っています。逆にブリップPUの音が抜けない固体は、いくら調整してもそのキャラクターは劇的にかわらないと思います。
ブリッジPUのトーンが抜けているストラトは「大当たり」だと思いますよ!是非参考にして下さい。
また、JazzをPlayする方でなければ、フロントPUを多用されるのは「真のストラト弾きではない!」と言い切ってしまいますよ!ブリッジPUを使いこなしてこそ「ストラトPlayer」です。(笑)

a>54年製ストラトキャスターのサウンド

当店はストラト専門店を看板に挙げている以上、開店以来「54年の在庫は絶対に切らせない!」をポリシーにして来ました関係で、2002年の開店以来54年製のストラトの扱いは延べ50本以上となります。その経験を持ってサウンド的にも「54年製は別物」と言い切らせて頂きます。
仕様的にはアッシュ・ボディー、1ピース・メイプルネックと55年と同じスペックになりますが、その音色を言葉で表現すると「ラウドになり切れず、少しこもった感じのダークなトーン」が特徴となります。
55年以降のストラトとの決定的な差はピックアップにあると思われます。54年製は外観上は55年と同じ3弦のポールピースの高さが低い通称「Short G」と呼ばれるPUが搭載されていますが、55年以降のブラックボビンPUに比べ、そのコイルの巻き数が少なく、直流抵抗値でも5.5KΩ前半以下の数字とかなり低めとなります。
よって50sのツイード系のアンプにプラグインしても、アタック感を含め「耳に痛くない」マイルドなトーンを奏でてくれます。またマーシャル系のチューブ・アンプでナチュラルにドライブさせても、輪郭が崩れることのない、Midレンジを中心にしたウォームで極上なドライブ・サウンドを奏でてくれます・・・50sメイプル・ネックの中では個人的に一押ししたいのですが、54年製というだけで高くなってしまいますので、何がなんでも54年!とは言い切れないのが残念で仕方がありません。

また54年製のストラト自体が「試作品」的な意味合いが強く、アッシュのボディー材の重さや塗装の仕方等、かなり仕様差が大きく、典型的な54年はコレだ!と断定できないのですが、7月頃までのアッシュボディー(特に4・5・6月)は重めのボディーが多く、その重量に比例した感じで、音的にはボトムがしっかり出ているのが特徴です。

b>55年~59年製ストラトキャスターのサウンド

ちょっと大胆ですが、50sのメイプルネックを「サウンド」という観点で1つのカテゴリーとしてしまいました。
仕様的には1ピース・メイプルネックという点とブラック・ボビンPUという点で共通していますが、他方55年と56年前半ががアッシュBody、56後半からアルダーBodyとボディー材の変更と、58年前半までは2トーン・サンバースト、以降が3トーン・サンバースト、その他ネック・シェイプ等含め仕様差があるのも事実です。

これもお客様から良く聞かれる質問の一つですが、「アッシュとアルダーのボディー材質の差はトーンにどれ程影響するのか?」・・・という点に関してですが、敢て50sのメイプルに関しては、ボディー材の違い以上に1本毎の「個体差」の方が勝ると思われ、仮に目隠しをした状態で同じアンプのセッティングでアッシュ・ボディーとアルダー・ボディーの50sを聞き比べても、その差異を明確に感じ取れる方は殆どおられないと思いますよ!

では実際のトーンはと言いますと「バキッと鳴る。音の立ち上がりが早くアタック感が強く、音の減衰も早い。かなりパワーのある音」が特徴となります。よく「50sの枯れたトーン」とイメージされているお客様が多いのですが、この年代のストラトは決して「枯れたトーン」ではなく、かなり「ラウド」に鳴りますよ!
また、MidとLowレンジの鳴りが強調される傾向にあり、クリーンなアンプ・セッティングの場合ハイ・レンジ(特に1・2弦の12フレット以上)の鳴りには物足りなさを感じる方もおられるかも知れません。
その主要因はブラック・ボビンPUにあります。この時期のPU自体、元来のデザインがミッドとロウ・レンジに若干偏ったデザインになっているからです。

またアッシュ・ボディーで多少重めの固体(3.6~3.8キロ前後)も多く存在しますが、重めのアッシュBodyの場合、そのボディー重量に比例する形でボトムが良く出てくる傾向にあります。

サウンドを体感する意味では、クラプトンの「デイク&ドミノス イン・コンサート」は良い50sトーンが聞けます。また最近ではレッチリのジョン・フラシャンテが50sメイプルと60sローズを上手くサウンドを理解した上で使い分けていると思います。是非参考にしてください!

c>59年~64年中期製ストラトキャスターのサウンド

ことサウンドに限定した場合には、スラブ・ローズネックとラウンド・ローズネックはカテゴリー的には1つと考えて差し支えないと思います。
この時期の主要因はやはり「ブラックボビンPUとローズネックの組合せ」にあると思います。そのPUのサウンド傾向は前述の50sメイプルと同様にMidとLowがフクヨカに鳴り、若干Highが弱めとなります。よく「スラブネックは音が太い」と言われがちですが、それは「スラブ神話」的なモノとお考え下さい。
音で選ぶならスラブ、ラウンドと区別することなく、両者を弾き比べ個体差を含めてご自身の一番イメージに近い1本選ばれるのが良いと思います。

但し、「ギター・サウンドの7割はネックで決まる」と繰り返し書かせて頂いておりますが、実際にその通りで、50sのメイプルと60s前半のローズ指板ネックの仕様上の差は、確実に「音」の違いとして現れてきていると思われます。
メイプルNeckが「バキッ!」とアタック感が強調されたトーンで音の立ち上がりが早いのに対し、ローズNeckの場合「グワ~ン」と若干粘りのあるトーンで、音の立ち上がりが若干遅い特徴があります。
また50s・60sを通してLow・Midが強調される特徴があるは前述しましたが、ローズNeckの場合には、多少なりともメイプルNeckに比べると「音の輪郭がボヤケル」傾向にありますので、極端にLowが出る固体を選択された場合、アンプのセッティングを間違えますと、Lowが出過ぎて「何を弾いているのか聞き取れない!」という事態に陥る可能性もある点を留意しておくと良いと思います。(その様な固体の場合には、アンプのセッティングの際にBassを控えめにする事で十分に解消出来ます!)

他方62~64年に通称「Big Neck」と呼ばれる、かなり太めのネック・シェイプのモノが極少数存在します(多分全体の2~3割り程度の利率ではないでしょうか・・・)
ネックが音の7割を占める以上、ネックの太さはそのトーンにも影響を及ばすと考えるのが自然だと思います。通常のシェイプのNeckに対し太い分、音を伝える体積も増す訳ですから、鳴り的には更にラウドになる傾向にあると推測されます・・・当店でもそれ程多くの「Big Neck」を扱った訳ではありませんので、断定は出来ませんが、まず間違いないと思われます。

この時期のサウンドとしては、やはりスティービー・レイ・ヴォーンやロリー・ギャラガー辺りが参考になると思います。但し彼らの場合、同じギターを長年Playし続けているので、PUを含め「すべてがオリジナル」という状態は保たれていないと考える方が自然です。それを差し弾いてもこの年代のストラトのサウンドのイメージを持つ好例としてお勧めです!
付け加えるならば、ロリー・ギャラガーの61年製は比較的「ブライト系でコード感がハッキリ出ている」固体で、レイヴォーン「#1」(62年12月NeckでBodyは59年製と言われていますね)のは「ファット系の典型」ではないでしょうか・・・この二人のサウンドの違い程に、ギター1本毎の「固体差」があると点をご理解頂けると思います。

またこの時期のストラトはアルダー・ボディーが標準仕様であるのに対し、ブロンド・フィニッシュには、一環してアッシュ・ボディー材が採用されています。このボディー材質の差によりサウンドの違いですが、前述の50sメイプル同様に「個体差」の範疇とお考えになり、「頭でっかち」にならずに実際にご自身で手に取って弾かれて判断する事をお勧めします。

d>64年後半~68年前半製ストラトキャスターのサウンド

64年後半より従来の「ブラック・ボビンPU」から「グレイ・ボビンPU」にPUが仕様変更され、数ヶ月後には「スパゲッティー・ロゴ」が「トランディション・ロゴ」へと仕様が移行されます。その他ピックガードが通称「グリーン・ガード」から白・黒・白の3プライの「ホワイト・ガード」に変更されたり、指板材がハカランダ(ブラジリアン・ローズ)からインディアン・ローズに変更されたり、ヘッド形状が大きくなったり、ボディーやネックの塗料が変わったり・・・挙げだしたら切がない程の仕様変更がなされた時期となりますが、こと「音」に限定し場合ザックリと1つのカテゴリーと考えて差し支えないと思います。

アメリカの音楽シーンも、カントリーやJazzといたカテゴリーから、60年代中盤にはRock’n Rollと呼ばれる新たなジャンルが確立され、それに伴い「エレキギター」自体がその主役として脚光を浴び、そのPlay自体も「リード・ギター」や「ギター・ソロ」という新たなスタイルが生まれました。
そのシーンに呼応する形で、ストラトのPUも従来のMid・Low主体の「ブラック・ボビンPU」から、そのパワー自体は維持しつつハイ・レンジまでしっかりサウンドを表現可能な「グレイ・ボビンPU」にデザイン変更を受ける事になります。
サウンドを一言で表現すると「”ガツン”と骨太に鳴り、LowからHighまで音の偏りがなくフラットに、かつパワフルに鳴る」と言えると思います。我々はよく「骨太なRockなトーン」という表現を使いますが、フェンダー系のクリーン・セッティングでも、マーシャル系のオーバードライブ・セッティングでも、レンジの広さと音のパワー感は容易に体感出来ると思います。
この時期のストラトは、有名ミュージシャンの使用例が少なく、仕様的に中途半端・・・というイメージが強いせいかあまり人気がないのですが、こと「音」として捉えた場合、ヘビー・ブルーズから60s&70sのクラッシック・ロックのジャンルをPlayされる方には、非常にマッチしたベスト・ストラトだと思いますよ!

余談ですが、64年後半の仕様変更過渡期には、の外観上は「グレイ・ボビン」でも、それ以前の「ブラック・ボビン」と同じワイヤーで巻かれ、サウンド・キャラクターも「ブラック・ボビン」と同じPUが存在します(この場合には、単にファイバー紙がブラック⇒グレイと考えられます)
他方主に67年を中心に、「グレイ・ボビンPU」に対し、64年前半同様の「ブラック」のファイバー紙を持ちたPUが一時期使用されます。これは前述の64年過渡期の「グレイ・ボビンPU」の逆パターンで、単にファイバー紙の色の違いのみで、サウンド的にはその当時の「グレイ・ボビンPU」と同じモノで、64年前半までの「ブラック・ボビンPU」とは異なります。

サウンド的にはジミー・ヘンドリックスの初期の「Hey Joe」や「モンタレー・ポップフェスティバル」を是非チェックしてください!心地良いストラト・トーンを堪能できますよ!

f>68年後半~71年中盤製ストラトキャスターのサウンド

通称「モダン・ロゴ」と呼ばれる時期の4ボルトのストラトで、その95%以上がローズネックとなります。
この時期の音楽シーンの特徴は、Rockの台頭とコンサートの大規模化(フェスティバル化)が加速した時期で、エレキギターに対しアンプが大型化(スタック化)し、同時にエフェクター(ファズ、ワウ・ペダル等)が市場に出回りだした時期となります。
前述の「グレイ・ボビンPU」が音楽シーンの変更に伴い設計変更されたの同様に、この時期ストラトは更にPUの設計変更が実施されます。
従来の「グレイ・ボビンPU」ではパワーがあり過ぎて、スッタック・アンプを使用した場合、ワウリングを起こしてしまうという不具合があります・・・当時PAシステム時代はかなり原始的で、「スタック・アンプにギターを突っ込んで、アンプのつまみはフルテン!」が普通だった様ですから、シングルコイルPUにはかなり厳しい環境と言えます。
そこで、エレキギターである以上ギターとアンプで1セットという発想から、アンプのパワーが上がった分、PUのパワーを落としてバランスを保つ・・・という概念だったのでしょう。この時期からPU本来のワイヤーの巻き数を約1,000ターン程従来より減らし、従来の「グレイ・ボビンPU」の直流抵抗値が約6KΩ前後だったモノが約5.5KΩ前後と、単体としては多少非力なPUが搭載されます。

サウンド的にはそのPUのデザイン変更の影響が顕著に現れ、「ジャッキ」とした歯切れの良い、ブライトなトーンが特徴となります。従来のギター・トーンとしてのウォームでラウドな存在感は若干薄れ、その分エフェクター等の掛かりが良くなり、サウンド・メイクの幅が広がったと言えると思います。
特にマーシャルとの相性は格別で繊細で細やかな絶妙なドライブ・サウンドは何とも言えません!
他方、この年代以降のストラトでレイボーン等のサウンド・メイクを目指そうと考えれも、同じストラトではありますが、60年代前半のモノとは「似て非なるもの」程の差がありますので、正直無理があります。
「本当はレイボーンやロリー・ギャラガーが好きだけど、予算的に60年代前半のビンテージ・ストラトには手が出ないので、今回はこの辺りの年代で妥協しよう・・・」という考えはハッキリ言って間違いです。絶対に後々後悔すると思います!

また、この時期よりジミヘンの使用で有名な「貼りメイプルNeck」のストラトも多少なりとも市場に流通し始めます。(フェンダー社のプライス・リスト上では1970年よりメイプル・ネックがオプション選択が可能となります。もちろんそれ以前の1959年以降、ミュージシャンからの特注扱いで、どの年代も「貼りメイプルNeck」は存在はします)
ローズNeckが標準で主流だったこの時期ですが、「貼りメイプルNeck」のストラトがそれ以前に比べると多数存在し、そのサウンドと特徴はローズネックを更に「ブライト」にさせて「アタック感を強調させたイメージ」と考えて頂ければ容易に想像出来ると思います。
他方当店の経験上の私見ですが、過去何本の「貼りメイプルNeck」のストラトを扱ってきましたが、そのすべてが抜群の音抜けと鳴りのギターでした。
その理由を論理的に説明するのは難しいですが、この時期の「貼りメイプルNeck」が基本的にオーダーであった以上、ミュージシャン等がオーダーしその後ガンガンPlayしまくった結果ではないでしょうか・・・よく「弾かれた固体は”鳴る”」と言われますが、それは間違いなく事実です。またよく弾かれたため、結果的に「貼りメイプルNeck」のストラトの大多数がリフレット、ナット交換が施されていつ点でも、ある程度説明はつきますね。

この時期のボディー材の基本はアルダーとなりますが、もちろんブロンド・フィニッシュに関しては一環してアッシュ材が使用されています。
この時期のアッシュ材はアルダー材に比べ多少重量的に重いものが存在します。「100%アッシュ材が重い」とお考えになるのは間違いですが、重めのアッシュBodyの場合、アルダーBodyのストラトに比べ音色は異なってきます。
何度も書かせて頂いておりますが、ボディーの重量分Lowが強調される傾向がると思われます。
よって多少重めのアッシュBodyのストラトで、60年代前半~中盤の様にMidとLowがよく出て、かなり「ファット」な感覚を感じるストラトも存在します。
太めのトーンをお望みの方には狙い目かも知れません!

g>71年後半~74年製ストラトキャスターのサウンド

この時期のストラトの主要スペックは「アルダー・ボディーで3点止め1ピース・メイプルNeck」となります。カタログ上では71年以前と同様にサンバーストのローズNeckが標準仕様となり、メイプルNeckはオプション設定(割り増し料金)となっていたにも関わらず、実際に市場に出回ったストラトの7割がメイプルネック、3割がローズネックと、圧倒的にメイプルNeckが主流となっています。
そのサウンドの特徴は、正直68年後半~71年前半の「貼りメイプルNeck」と殆ど同じと考えて差し支えありません。「”ジャッキ”とした”ブライト”なトーンで、アタック感が強く、エフェクター等の乗りも良い”」・・・となります。他方ローズNeckの場合、若干音の粘りが出てブライト感が薄れる感じで、前述の68年~71年のローズNeckと同じイメージで考えて差し支えないと思います。

この時期のボディーはアルダー材となりますが、ブロンド・フィニッシュと72年後半よりNew Colorに加わる「ナチュラル・フィニッシュ」に関してはアッシュ材が使用されています。この時期のアッシュ材はアルダーに比べ重量的に重くなります。アルダーBodyの平均値が約3.5キロ前後なのに対し、アッシュBodyの場合、平均で3.8キロ前後、重い固体では4.0キロというギターも存在します。当然アルダーBodyのストラトに比べ音色は確実に異なってきます。
何度も書かせて頂いておりますが、ボディーの重量分Lowが強調される傾向がると思われます。
よって多少重めのアッシュBodyのストラトで、60年代前半~中盤の様にMidとLowがよく出て、かなり「ファット」な感覚を感じるストラトも存在します。
太めのトーンをお望みの方にはやはり狙い目かも知れません!

>74年後半~76年製ストラトキャスターのサウンド

74年後半から基本的にはボディー材が従来のアルダーからアッシュに変更となり、ピックアップのポールピースがスタッガードからフラットに変更となります。
ピックアップの仕様変更に関しては、こと”音”のみで考えますと、大きな差異はないと思います。逆に現在の様に1~3弦をプレーン弦を使用する場合には、バランスが取り易いのでプラス面こそあれ、マイナス面は殆どありません。
但し、ボディー材の変更は、やはり確実に音色の差として現れて来ます。基本は前述の74年までと同様に「ブライトで”ジャッキ”と歯切れの良いトーン」となりますが、LowからHighまでしっかり鳴ってくれます。ボディー材の変更に伴う重量アップが我慢出来れば、かなり使えるギターだと思います。

また例外的にトレモロ・レスのハードテイルや左用に関しては、74年に加工されたボディーを75年に組立て・出荷されたモノも多く、75年製のフラット・ポールPU仕様でありながら、アルダーBodyというストラトも多数存在します。その場合には「サウン」に関しては74年前半までと同じと考えて差し支えありません。

i>77年後半~79年製ストラトキャスターのサウンド

77年以降、ボディーのコンター部分やエルボー部分加工等、すべてが浅くなりその分重量は更に増します。この時期になりますと平均重量で4.0キロを超える固体が殆どで、手に持った感じも「ズッシリ」してきます。また当時は70年代中期はハードロック全盛期という事もあり、ストラトのピックアップの「非力さ」に不満を持つミュージシャンも多く、70年代のストラトにハムバッキングを改造して搭載したり、リプレイスメントPUでパワーのあるモノに交換したりする例が多数あります。
フェンダー自体、その様なミュージシャンの不満を解消すべく、77年頃より従来のピックアップを多少デザイン変更し、よりパワフルなモノを搭載する様になりました。
ボディーの重量アップとピックアップのパワー・アップの影響で、この時期のサウンドはかなり変化を遂げます。
従来が「ブライトで‘ジャッキ”としたトーン」だったのに対し、かなり「パワフルで”ガツン”」と鳴る様になります。
もちろんメイプルNeckかローズNeckか・・・という違いは音の立ち上がり時に影響し、メイプルNeckの方が立ち上がりが早く、ローズNeckの方がパワーが増した分「音が粘る」印象を受けます。

j>80年~81年製ストラトキャスターのサウンド

この時期、フェンダーはブリッジ・ポジションにのみ「X-1」という更にパワーのあるピックアップを搭載します。(フロントとセンター・ポジションのPUの直流抵抗値が約5.5KΩ前後なのに対し、「X-1」ピックアップはその1.5倍の7.5KΩ前後の数値となります)
これにより、ストラトは「非力」というイメージは払拭され、重ささえ辛抱出来れば、かなり使い勝手の良いギターになったと言えると思います。
フェンダー系のアンプでクリーンにセッティングしても、「サウンド」として捉えれば60年代中期頃のパンチのあるトーンが得られますし、マーシャル等アンプでナチュラル・ドライブさせれば、下手なハムバッキングPU搭載ギター程度のファットなドライブ・サウンドを得ることが出来ます。