はじめに
(追記:2013年9月)現行のストラトキャスターとビンテージ・ストラトキャスター、2本を弾き比べれば、大概の方は「同じストラトキャスターでも音が違う」という事は体感頂けると思います。
もちろんビンテージ・ストラトキャスターを試奏され、「今持っているカスタムショップ製のストラトと余り変わりませんね~」とお話される方も居られるのは事実です。また、音の違いをある程度体感された上で「自分は今持っているカスタムショップ製のストラトの方がしっくり来ます。」とおっしゃる方ももちろん居られます。
嗜好の世界である以上、色々な感じ方があって当然だと思います。
ビンテージ・ストラトキャスターの魅力にハマり30数年・・・ビンテージ・ストラトキャスター専門店を開いてしまった私ですが、そのサウンドやPlayフィーリングにハマっているPlayer的な側面と、ビンテージ・ストラトキャスターそのものに惚れこんでしまっているコレクター的な側面を持ち合わせています。
30数年間以上に渡り、ビンテージ・ストラトキャスターを探し続け、2002年に当”Strato-Crazy"をオープンさせて以降も、自身の為のビンテージ・ストラトキャスターを買い続けて今日に至ります。
もちろん、自身として納得出来ないビンテージ・ストラトを購入してしまい、後悔した回数は星の数程ありますし、「代金を支払ったのに商品が来ない」・「届いた商品が事前に聞いて納得していた仕様と違う」・「オリジナル・カスタムカラーと言われて購入したのに、明らかなリフィニッシュ物だった」等、トラブルとなったディールも同じく星の数程あります(苦笑)
その過去の嫌な経験を踏まえて都度学習して今日に云ったている訳で、その多くは現在では「勉強代」だったとして気持ちの整理を付けています。
ビンテージ・ストラトキャスターの存在自体は、現在でも頑張って手が届かないレベルではありませんが、反面決して安い買い物ではないのは事実です。
またそのアプローチの方法も、Playを楽しむのと、コレクションを極めるのではまったく異なりますし、Playを極めるための「ベスト・パートナー」を探すにしても、年式の違いや個体差を含め選択肢は無限大となります。
私自身がそうであった様に、「ベスト・パートナー」に出会えれば、その後多少の浮気はあっても長く愛用出来、結果的に「安い買い物」だったと言えますが、衝動買いや妥協して購入した個体はやはり納得出来ず、比較的短期間の間に手放してしまう事になると思います。
安い買い物ではない分、売って・買ってを繰り返せば、ご自身のビンテージ・ストラトキャスターに対する経験は増えますが、金銭的なロスは間違いなく多くなってしまいます。私自身はこのロスを、前述の通り「お勉強代」と割り切って気持ちの整理を付けて来ましたが、ロスは少ないに越したことはありません。
また、ビンテージ・ストラトキャスターがある程度の金額になってしまった昨今では、「ちょっと興味があるから、弾かせてください!」と言って、「是非試してください!」と手放しで試奏をさせてくれるショップは先ず無いと思います。
よって、ビンテージ・ストラトキャスターには興味があり、良いモノを是非1本所有したい・・・とお考えになっていても、中々接する機会が持てないのが昨今の状況だと思います。
「これからビンテージ・ストラトキャスターを購入したい」もしくは、「何本かビンテージ・ストラトの所有経験はあるが、自身にしっくりくるストラトと未だ出会えていない」そんな方々に、私自身の経験より何かアドバイスが出来ればと思い、本コラムを書かせて頂きました。
本コラムはあくまで私(店長KEY)の私見として書かせて頂きます。
当店にご来店頂いたお客様との会話の中でよく聞かれる事やお客様の勘違い、その会話を通じて私が常日頃感じている事等をまとめてみました。
ビンテージ・ストラトは決して「安い買い物」ではない以上、出来れば購入した後に後悔はして頂きたくないと思います。
ご購入を考えておられるお客様の参考にして頂ければ幸いです。
私の意見が「絶対」ではありませんので参考程度お考えください。
また、以前より私の書いたコラムをお読み頂き、メール等にてご意見等をお送り頂く方が居られますが、中には悪意に満ちた内容のモノも少なくないのが事実です。
本コラムは、あくまでも私の過去の経験をベースとした私見として書かせて頂いております。
お読み頂き、不快になる様な内容は書いていないつもりですが、本記載内容に関するご質問やご意見、お問合わせ等に関しては、大変恐縮とは存じますが、「一切なし」にてよろしくお願い致します。
また、書き方が「クドイ」とか、長くて読み難いという内容を書かれたメールを以前に多数頂きました。読み難いのであれば読まずにスルーしてください!
1)ビンテージとは
まず前提としてストラトキャスターに限らず、「ビンテージ」と名の付くギターやその他「時計」・「クルマ」・「家具」等の価格には、中古商品である事とは別に、ある種「骨董的な付加価値」が加味されている事をご理解ください。
「古いモノがすべてビンテージか?」というと必ずしもそうとは言えず、「古いモノで、かつ現在でも欲しがっている人が多く、それなりのマーケットが既に確立している」事が前提になると思います。
ギターの場合、「中古」と「ビンテージ」の線引きは明確ではありませんが、前述した「骨董的付加価値」の加味の有無を考えると、当時販売されていた価格(定価)を超えたプライス設定がされているか否かが一つの判断基準ではないかと私は考えています。
フェンダー・ストラトキャスターに限定した場合には、以前は「74年製のスタッガード・ポールピースPUが搭載されたモデルまで」と限定出来ましたが、近年では82年初頭までの3ボルト・ラージヘッドNeckのストラトの価格がかなり高くなり、コンディションが良ければ当時の販売価格を超えた価取で引されるようになりましたので、当店では82年初期製までのラージヘッド物を基本的には「ビンテージ」として扱い・管理しております。
当店の場合には海外のお客様も多く、商品管理は常に世界標準(USマーケット)に照らし合わせていますが、「82年初期までのラージヘッドをビンテージと考える」・・・この基準の考え方は間違っていないと思います。
よって、82年製以降の変則スモール・ヘッドの4ボルトNeckの「通称スミス・ストラ」や、「The Strat」「エリート・ストラト」等は。生産されてから既に35年以上が経過してはいますが、残念ながらマーケットでの評価は「中古楽器」となっています。
近年では、初期のフェンダー・ジャパン製品(通称「JVシリアルモノ」)や、同じく82・83年製の初期F/USAのビンテージ・リイシュー物を「ビンテージ」と称し、「付加価値」を加味した販売価格設定をする動きが一部に見られますが、確かに既に30年以上前の製品ではあり、定価を越えた販売価格に対し需要がある以上、私も「ビンテージ」と考える事は問題ないと考える様になっています。
同じく、60年代・70年代の国産ギターが「ジャパン・ビンテージ」と称されて、「中古楽器」とは異なる多少なりとも高めの価格設定がされていますが、この件に関しても国内外にコレクターの方々も存在し、世界標準的には小規模ながらマーケットも存在するのは事実で、私としても何ら否定するものではありません。
但し、本コラムに初期リイシューモデルや国産コピー・モデルのストラトを加えると混乱を招きますし、私自身専門外なので、ここでは「Fender USA製の1954年~1982年初頭生産のストラトキャスター」に限定させて書かせて頂きますのでご了承ください。
(追記:2013年9月)
最近の1~2年に限定して国内市場を見る限りでは、俗に「ヘッド・シリアル」と呼ばれる70年代後半~80年代初頭のストラトキャスターに関しては、コンディションによっては10万円代での取引が主流になっている様に思われます。同仕様の当時の新品の販売価格が20万円後半だったため、昨今の販売価格から見る限りでは「ビンテージ」とは言えず、「中古楽器」という扱いになってしましますが、フル・オリジナルでコンディションの良い個体は、依然当時の販売価格にに近い金額となるのが実情のため、”Strato-Crazy"及び本コラムに於いては、引き続き82年初頭の「ラージヘッド」までを、ビンテージ・ストラトキャスターとして扱わせて頂きます。
2)ビンテージ・ギターを買う事とは・・・
ご来店されたお客様とよくお話をする事ですが、私自身初めて購入したギターからビンテージ・ギターを実際に入手するに至るまでには相当の時間が掛かっています。
国産コピー・モデルを入手し、音楽雑誌を読み出しビンテージ・ギター(70年代当時は「オールド・ギター」と呼ばれていました)の存在を知り、ミュージシャンのインタビューや紹介記事で「〇〇は57年製のオールドのストラトを愛用している」みたいな事を知り、更に興味を持ち、楽器屋さんのショーケースに飾られている「オールド・ギター」を見たさに1時間も電車に乗って現物を見に行き、怖くてとても「音を出させて下さい!」とは言えず、それでも30分以上もショーケースに見入ってしまった・・・高校生の頃の私はそんな感じでしたよ!皆さんも多かれ少なかれ同じ様な経験をされた事があるのではないでしょうか?
今風に脚色するならば、高校入学祝いにFender
Japan製のストラトキャスターを両親に買ってもらいギターに目覚め、その後バイトしてお金を貯めてFender
USA製のストラトを購入して念願の「USA製の本物」を入手。その後は雑誌やショップで紹介されたお勧めのピックアップやパーツを買って、ギターを自分なりに改造して好みのストラトに仕上げてPlayを楽しんで学生時代を過ごす。
就職して初めてのボーナスで憧れだったCustom
Shop製のストラトを購入。その後よく行く楽器屋さんの店員と仲良くなり、お店に遊びに行く様になってカスタムショップのマスタービルダー物のストラトを何本か弾かせてもらい、気に入った1本をショッピング・クレジットで購入。
就職し学生時代の様にバンド活動に精を出す時間の余裕もなくなり、日頃聴く音楽も以前の様に「流行」の音楽全般ではなく、レイボーンやジミヘン、ロリー・ギャラガー等のより「ギターをメインに出したスタイルで、ギター本来のトーンとフレーズを奏でる音楽」に興味の対象が移行し、以前から存在は知っていた「ビンテージ・ストラト」に俄然興味が沸き、関連書籍等を購入し色々と知識も増え、専門店を覗く様になった・・・というケースってあると思いませんか?
私はよく「最短距離でビンテージに来られるお客様はいない」というお話をさせて頂きます。前述の例え話の様に、ストラトに限って言っても色々なグレードや仕様の物を実際に手にしPlayをし、それぞれのトーンの違いを経験された方でないと「ビンテージのトーン」はご理解頂けないと思います。
人生経験と同じく、数々の楽器経験やその楽器やアンプ・エフェクターを含めた「トーン」の経験に基づき、皆様それぞれが「理想のトーン」というイメージを持たれ、その理想を現実のモノにする一つの手段として「ビンテージ・ストラト」が存在するのではないかと私は思っています。
すなわち、ご購入される方にとって「理想や夢」を実際に実現する選択であり、慎重になって頂きたいですし、失敗や後悔はして頂きたくないと思います。
ご購入をご決断された時点で「これが自身にとって最後のギターで、一生付き合って行く!」という位の覚悟を持ってギター選びに臨まれると良いと思います。
骨董の世界では「目利き」がステイタスとされ、「マガイ物」を掴んでしまっても「目利きがなかった」とし、それも「経験」と自笑する・・・という話をよく聞きますし、ビンテージ・ギターの世界でも昔は資料や文献も少なく、骨董に近い世界だっと時期も確かにありました。私自身過去に相当の「お勉強代」を支払って現在に至ります。
しかし現在のビンテージ・ストラトの価格は「お勉強代」と自笑出来るレベルを遥かに超えています。「理想や夢」を具現化した買い物が「変なモノ」では洒落になりません。
よって私自身、お客様に「夢」をお売りする商売として、「決して嘘や偽りでお客様を失望させてはいけない!」という気持ちを持って常に臨ませていただいております。
(追記:2013年9月)
「ビンテージ・ストラトキャスター」・・・その言葉の響きは高貴で、唯一無二の存在の様に思えますが、現実的には製造・販売されてから40~60年以上が経過した「中古楽器」である事は否定出来ません。ご購入されるお客さまにとっては、販売価格が通常のメーカー新品楽器の数倍の高額商品であるが故に、「中古楽器」と云うもっとも重要な前提事項を忘れてしまっている方々が多く居られます。
「高額な楽器なんだから、当然何処の不具合はない」・・・この考え方は、ビンテージ・ギターには通用しません。価格が高いのは、その「ビンテージ」という存在に対しての評価であり、大前提となる「中古楽器」としてのクオリティーは、販売するショップとしての各販売商品への対応如何によると思います。
もちろん購入された後も、新品楽器の様なメンテ・フリーという訳にはいきません。愛器を随時ケアしてもらえるショップなりリペア・マンの存在は必要不可欠だと思います。当然ですが、定期メンテやマイナー・プロブレムでの対処に対して費用は発生し、然るべき「維持費」が掛るのは否定出来ない事実です。
「ビンテージ・ストラトキャスター」=「中古楽器」という大前提を忘れず、ご自身にとって長く付き合える1本を探されて下さい。また本コラムは、そんな皆さんを応援させて頂きます!
3)ビンテージ・ギターの価格設定
ストラトキャスターに限定した場合でも、前述のとおり54年製~82年製とおよそ30年間に製造されたギターが対象となり、すべてのギターが当然のことながら現在同じものを製造・供給することは出来ません。
よって無改造品で当時販売された状態のまま現存している固体が一番高く、それから「傷や塗装ダメージの有無や状態」、「パーツ交換やリフレットの有無」、「ケースやその他付属品の有無や状態」等によって金額がマイナスされて具体的な価格が設定されるのが基本とお考えください。
その他、もちろん「マーケット(市場)での人気・不人気」、「マーケット全体の経済状況、為替を含めた各ショップの仕入価格」「、仕入商品か委託販売商品か」等、さまざまな要因が販売価格に影響を及ぼします。当然のことながら「定価」という概念はありませんので、ある程度の市場価格をベースに各ショップの独自判断で価格は設定されます。
1990年代までは、日本に住んでいる普通の方々がアメリカのショップの価格を簡単にリサーチする事は不可能でしたが、現在はインターネットを通じ、瞬時に海外の専門店や楽器専門サイトにアクセスし、価格を知る事が可能になりました。よって日本のショップの価格が海外に比べて「高い」という事はまずないと思います。逆にここ数年はアメリカ市場が異常に価格が上がったため、日本の価格が追いつけず為替次第では「日本の方が安い」という現象が起きていました。よって「日本で売られているビンテージは高い」という概念は持たないで下さいね!
また、ギターに限らずすべての骨董品(ビンテージ商品)に言える事ですが、「当時の生産・出荷本数が少ないモノ」、「変わった仕様のモノ等(レア・モデル)」、「新品同様の状態のモノ」に関しては、当然ながら市場での流通量は極端に少なく、価格も通常品の数倍から10数倍・・・と驚くほど高額な価格となります。
逆に演奏上何も問題はありませんが、「骨董的価値が劣る」というモノは比較的安い価格設定となります。具体的には「ボディーやネックがリフィニッシュされたモノ」、「木部に加工痕があるモノやネックとボディーの年代が大幅に異なるモノ」、「パーツ交換が激しいモノ」等が挙げられます。
この手のギターに関しては余程の「ジャンク」でない限り、「Playを楽しむ」という観点ではまったく問題はありません。加工痕があろうと木部がしっかりビンテージであれば、そのサウンドもかなりのレベルだと思います。実際に手にとってご自身で確認されてOKであれば、その分割安な価格で購入出来る訳ですから選択肢の一つに加えられて良いと思います。
今程インターネットが普及していなかった1990年代までは、地方の楽器屋さんや個人売買等で、オリジナル度の高いビンテージ・ギターが信じられない程安価な価格で入手出来たケースもありましたが、昨今は皆さんがある程度の知識と市場価格を把握されているので、「安くて良い物」というのは期待出来ません。ネットや雑誌広告で「安い」プライス設定がされている場合には、多かれ少なかれ何か「理由」があるとお考えになった方がよいと思います。詳細をご自身で確認され、内容を理解される事が第一ですね!
他方、ビンテージ・ギターである以上その「サウンド」は購入をご決断をされる際に重要な要因だと思います。但し、「サウンド」はしっかりセッティング・調整を行えば、そのギター本来のパフォーマンスを発揮することは可能です。よって私は「このギターは音が良いから高い!」というのは個人的には成立しないと考えています。
(追記:2013年9月)
ストラトキャスター誕生の1954年以来、1975年までの約30年間、ストラトキャスターの標準カラーは「サンバースト」となり、それ以外のカラーをビンテージ・ストラトキャスターの場合「カスタムカラー」として別に扱います。
昨今の新品ギターの場合、カラー・バリエーションも豊富で、サンバースト以外のカラーのストラトキャスターも普通に目慣れていると思います。
ビンテージ・ストラトキャスターの場合、前述の「カスタムカラー」は、そのカラーの珍しさ(裏を返せば、発売当時は人気がなかったカラー)によって、同年代のサンバースト・カラーのストラトの価格に対し、2倍~数10倍という恐ろしく高額な価格で取引されるのが一般的です。
当”Strato-Crazy"の場合、オーナーの私自身がPre-CBS期のカスタムカラー・ストラトキャスターのコレクターのため、当然日頃より「カスタムカラー」にはコダワリを持って、可能な限り仕入れては皆さまにご紹介させて頂いております。
HP上でも「価格はお尋ねください」という表示になるケースが殆んどですが、正直入荷すればかなりの価格設定になってしまうと思います。価格をお尋ねになるお電話口で「高い!」とおっしゃる方が多々居られますが、私自身は常に可能な限りの価格交渉を行って仕入れ価格を抑えた上での、フェアー・プライスだと常に認識しております。
「カスタムカラー・ストラトキャスターは安くない!」・・・この事実は認識頂きたいと思います。
また逆にオリジナル・カスタムカラーが割安価格・・・といった場合、まずは疑ってみてください。世界的にオリジナル・カスタムカラーが安く売りに出る・・・という事は昨今のマーケットでは、先ず考えられませんよ!
同じくフル・オリジナルのミント・コンディション物に関しても、やはり同年代のリフレット・ナット交換物に対し、2倍前後のプライス設定は当り前だと思います。良い物が安く買える・・・そんな事は昨今では先ず考えられませんよ!
4)日本のビンテージ・ギター市場
ビンテージ・ギターはアメリカを中心に、ヨーロッパ、日本、アジア諸国と既に世界規模でマーケットが確立されています。
以前は各国の独自色が色濃く出ており、各国を繋ぐ交流はミュージシャンとショップの方やディーラの方々が担っておりました。しかし昨今はご承知の通りインターネットの普及でボーダー・レス化が加速し、独自色は薄れて来ているのが実情です。
但し世界的マーケットの中心であるアメリカと、早くからアメリカ製のギターが流通していたイギリスと、日本を含めその他の地域では歴史的背景を含め根底に流れる求められるお客様の考え方には大きな差があると日頃から痛感しております。
アメリカの場合、発売当初から品物が普通に売られ、使われなくなったギターは中古楽器として流通し、その後70年代にミュージシャン等の使用により徐々にその存在が脚光を浴び、長い年月を経て今のビンテージ・ギターのマーケットまで成長してきた歴史と経過があります。
他方日本の場合には、フェンダーが正式に新品として売られる様になったのが1965年で、それ以前のプリCBSモノは、海外旅行等でアメリカに行かれた際に個人で買って持ち帰ったモノか、日本駐在の米兵が持ち込んで日本で処分したギター以外は存在していませんでした。
その後やはり海外有名ミュージシャンの使用等で徐々に話題になり、70年代中頃に「オールド・ギター」として音楽専門誌等が紹介したのを契機にその存在が脚光を浴び、以降ショップを通じてアメリカから輸入されギターが「オールド・ギター」と呼ばれ販売される様になり、現在に至ります。
よって日本の場合には、中古だったモノが徐々に「骨董的価値」を持ったというより、かなり初期の時点から「骨董的な付加価値」を持ったモノとして紹介・販売されていた訳です。他方、商売である以上「売れる(人気のあるモノ)」を仕入れる原則にのっとり、ブランドや機種・年代・仕様等の商品ラインナップにかなりの偏りが初期の時点からあったと思われます。
ストラトに限定した場合、90年代以降ビンテージ中心の専門ショップが大都市を中心に多数出来、そのショップのすべてにプリCBSのストラトが売られ、1~2本はカスタム・カラーもある・・・といった状況で、60年代後半~70年代前半のジミヘンの使用で有名な「貼りメイプルNeck」のストラトに関しても、数件ショップを回れば1本は見つかる・・・といった具合でした。
他方で「トレモロ・レスのハードテイル・モデル」や「レフティー」は殆ど存在しない・・・といった具合です。その傾向は現在に至っても変わることはありません。
私個人としても、残念ながらお金を持って仕入にアメリカを訪れた場合、好き好んで売りにくい「ハードテイル・モデル」や、需要が限られている「レフティー」のストラトを同じお金を払って仕入ようとは正直考えないですね。
日本のマーケットの特徴としてもう一つ挙げられるのが、ビンテージ・ギターを弾いて楽しみたい「Player志向」のお客様が多く、「コレクター」と呼べるお客様が極端に少ない事です。
70年代に「オールド・ギター」が紹介された時点から、そのギターの歴史的な紹介はもちろんされていましたが、やはり「〇〇がPlayしている」とか「〇〇のアルバムでPlayされた」等「サウンド」として「良い音がする」的な紹介が中心で、ビンテージ・ギター=「良い音のする楽器」的な図式が完成し、その後現在に至るまで脈々と受け継がれて来たものなのでしょう。
逆にコレクターの方が少ないのは、日本の場合「コレクター」=「オタク」・「根暗」な人種ととらわれがちで、あまり市民権を得難い土壌が作用しているかも知れませんね。
私の友人のアメリカのコレクターは、「自分はギターを弾かせたらビックリする程下手だぞ!ギターが上手く弾けない分ギターそのものが好きになって、気が付いたらコレクターになっていた」と言っていますが、日本では普通に笑いながら他のギター好きに「自分はギターが殆ど弾けない」とは公言はできないですよね・・・笑。
余談ですが、私自身は昨今日本のビンテージ・ギターを求められる方の大多数がPlayer志向であることは、対象がギターである以上健全なのですが、その事が日本市場の将来への不安を暗示していると思えて仕方がありません。何故なら「Player志向」であればやはり「弾く事」を前提にし、予算的にも限度があると思うからです。
ビンテージ・ギターに対しては、ここ数年年間で、従来以上に「骨董的付加価値」が加味され価格は高騰の一途を辿りました。当店を例にとっても、2002年12月開店当初の価格と比べると殆どの商品が2倍弱の価格帯に上がってしまいました。アメリカのサブプライム・ショック以降、アメリカ・マーケットでの急こう配での右肩上がりの価格上昇に一応のストップは掛かりましたが、長い目でみれば今後も大幅に価格が下落するとは考え難く、緩やかな価格の上昇傾向で推移すると思われます。
世界市場的には安定+緩やかな上昇がベースとなる中で、Player志向の日本のお客様方には既に「手が出ないモノ」になりつつあるのではないかと感じる瞬間が多々あります。正直普通のコンディションのサンバーストのスラブNeckのストラトが、国産高級車クラスの価格になっている訳ですから、簡単には手が出せませんよね!
それでも、既に何らかのビンテージ・ギターを所有されている方であれば、現在所有されているギター自体の価値も同じ様に上がっていますので、下取り+僅かな追金でのアップ・グレードは可能ですが、「ゼロ」からの購入となるとハードルは相当高くなります。それこそ「宝くじが当ったら欲しい!」という夢物語になってしまうのかも知れません。
また現在10代・20代でバンドややられている方々には、憧れのミュージシャンが現行モデルや本人のシグネチャー・モデルを使用するのを見て育っていますので、そのモデルを入手して「夢」は達成してしまい、ビンテージ・ギターへの憧れを持っている人は少ないのではないか・・・と思えて仕方がありません。もちろん若い方々も「ビンテージ・ギター」の存在は雑誌等を通じて知っているとは思いますが、自分には関係ない「お金持ちの道楽」的に考えているのではないでしょうか。
以上の様に日本国内市場が収縮して行けば、海外からの新たな入荷も減り、他方世界規模のマーケットが日本同様に収縮するとは考え難い以上、日本にあるビンテージ・ギターが徐々に海外に流出していく事になると思います。そして10年・20年後に気が付いた時には、「良いビンテージ・ギターは日本にない」という事態に陥ってしまっているのではないか・・・と思えて仕方がありません。
5)ビンテージ・ストラトキャスターの市場価値の動向
2008年のリーマン・ショックに端を発した「世界的金融危機」の影響を受け、日本市場に限らず世界的規模で、ストラトを含めたすべてのビンテージ・ギターの価格の値崩れが発生し、2009年時点にて2007年頃のピーク時に対しプレイヤーズ・コンディションの物で2/3程度に価格が下落しました。
ビンテージ・ギターは輸入スポーツカーや高級時計と同様に、かなり趣味性の強いマーケットとなり、市場経済の動向にかなり影響を受けるのは避けられないと思います。
また、「ビンテージ・ギターは値下がりしない」という北米市場の過去のマーケット動向を、アメリカの投資系雑誌等で盛んにPRした影響もあり、「真のギター好き」以外の「投資目的」での市場介入が起こり、一時は半年で25~30%の値上がり・・・という長年マーケットを見てきた我々には信じられない事態が数年続き、その後の金融危機で一気に冷え込み「ギター・バブル崩壊」と言える値崩れを起こしてしまいました。
特にメイン・マーケットの北米では個人の貯蓄率が極めて低く、大概の方が銀行からお金を借りてギターを買っている状況だったため、証券・不動産価値が下落するに伴い、更に融資を受ける事が出来ず、ギターに廻す資金が工面出来ない・・・という状況に陥りマーケットが停滞しているという話を当時よく耳にしました。
確かに「ビンテージ・ギターは値が下がらない」という点では、北米市場に関してはリーマンショック前までの価格急騰が「異常現象」で、20年以上の長い年月で年に5~10%程度価格&価値が上昇するといった傾向で推移して来ました。
但し日本マーケットに於いては、92年のバブル経済崩壊時に、リーマンショック後の「ギター・バブルの崩壊」状況とまったく同じく、価格が1/2~2/3程度に急落する事象が起こっております。その後不動産価格同様に5~7年の歳月を掛けながら市場が健全化された経緯があります。
ビンテージ・ストラトキャスターの市場価値の動向を予測する事は即ちマーケット動向を予測する事となる訳ですが、前述の通り市場経済にもろに影響を受けますので断言は出来ませんが、何点かはっきり言える事があると思いますので、以下書かせて頂きます。
*ストラトに限らず、ビンテージ・ギターが現在生産・供給出来るモノではなく、その絶対数量は限られています。
一度オーナーの所有となったモノは、その方が手放さない限り市場には戻って来ません・・・よって流通本数は年々減る一途です。
*単に「古いモノ」という骨董的価値以外に、現在生産されているリイシュー物等と比べ、楽器本来の音を含めた圧倒的な「存在感」を持っているのは疑う余地はないと思います。
現にストラトに限っても本家Fenderですら、一生懸命「リイシュー」と称してビンテージ・ストラトのLooksやSoundを模倣しようとしたコピー・モデルを作っているのが実情です。
*フェンダー・ストラトキャスターはギブソン・レスポールやフェンダー・テレキャスターと並び、エレキ・ギターのスタンダードとして不動の地位が確立され、将来その人気に陰りが生じる事はありません。
*ビンテージ・ギターのマーケットはアメリカを中心に世界規模で既に確立され、将来そのマーケット規模が拡大する事はあっても、縮小する事はないと断言出来ます。
現在はビンテージを所有していないが興味はお持ちで「いつかは憧れのビンテージを手にしたい」という、ビンテージ予備軍と呼べる方々は多数おられるのが事実です。当店の場合でも昨年以来ギター価格が下落傾向に転じてから、新規のお客様の来店が確実に増えております。
また昨今では、アジア圏の途上国の富裕層に対しても「ビンテージ・ギター」の存在が認知され始め、徐々にマーケットが世界規模で拡大しているのが事実です。当店の場合、この数年タイのお客様が増えた様に思います。また今後中国で本格的に「ビンテージ・ギター」が認知されれば、更に需要は飛躍的に拡大するかと思われます。
次に近年顕著になってきた「マーケットの2極化」に関してお話させて頂きます。
以前のビンテージ・ギター市場は、ギターの人気・不人気という需要と供給の市場原則に従い、価格の違いこそあれ、人気の高い機種(モデル)であれば、ミントやレア物からプレイヤーズ・コンディション物やリフィニッシュ物と、すべて同じ傾向で価格変動していました。
ストラトキャスターの場合は人気モデルのため、市場が活況だった時期には私自身商品集めに相当苦労した記憶があります。
その傾向に変化が生じてきたのは2008年初頭位からだと思いますが、相変わらず「ミントやレア物」の価格が上がる一方で、「プレイヤーズ・コンディション物やリフィニッシュ物」の価格が横ばい傾向になりました。
その後、2008年秋のリーマン・ショック以降は、「ミントやレア物」の価格が横ばい(高値安定)に対し、「プレイヤーズ・コンディション物やリフィニッシュ物」の価格は急激な下落に転じ、その後数年掛けて底を脱し、横這いないしは僅かな上昇傾向に転じて現在に至ります。
私は、この傾向は正にビンテージ・ギターに対する購入される方々の思いが反映された必然の結果だと考えております。
ビンテージ・ギターが持つ素晴しい「トーン」に憧れ、夢の音を手に入れ弾こうと考えられている「プレイ志向」のお客様と、究極のコレクションとしてより完璧なコンディションのレア物を手に入れたいと思い探される「コレクター」のお客様・・・ビンテージ・ギターを探されるという行為はおなじですが、対象となる「求めているモノ」はまったく異なっている訳です。
「プレイ志向」のお客様の場合、購入したビンテージをスタジオやライブで実際ににガンガンPlayして楽しむ訳ですから、現実問題として「弾くギター」に出せる金額予算もおのずと上限があると思います。
よってリフィニッシュ物に代表されるギターはそのお客様が「欲しい!」と思える価格帯に収まらない限り売れない・・・また、その様なビンテージには「コレクター」の方は興味を示さない。よって上がり過ぎてしまった価格は、市場原理に従って「実際に売れる価格」に是正されるという事象が起こり、その後その「弾けるギターとしての価格帯」が維持されていると私は分析しております。
また「弾くギター」に出せる金額の上限こそが、その時々の経済情勢にかなり変化を受けるのが実情ではないかと考えております。
つまり社会一般が好景気に転じれば、購入を検討される方々の懐具合も良くなり、購入予算も上昇し、景気が悪化すれば財布の紐は固くなり余程の「割安感」を感じない限り購入は控える状況に陥り、価格は下落するといいた具合です。
ストラトに限定した場合、改造物やコンバージョン物、リフィニッシュ物は「プレーヤーズ・ストラト」と断言でsきますが、オリジナル・フィニッシュ物の場合、「プレイヤーズ・ストラト」と「コレクターズ・ピース」の区別・・・この件に関しては過去より、コンディション評価を含め各ショップやディーラー間にて相当の差異があり、明確な線引きは不可能だと考えます。
一言で端的に表現すれば「プレイヤーズ・ストラト」とは、「コレクターの方々が興味を示さないストラト」という事になります。(笑)
また市場価格が高くなるに従い、「コレクター」と呼ばれる方々の探しているギターに対する「要求値」が高くなっており、「コレクターズ・ピース」と呼べるストラトは更に減少傾向にあるのは事実だと思います。
前述の通り、昨今の厳しい経済状況下のビンテージ・マーケットにおいても、カスタムカラー物を含めた「レア物」や「ミント・コンディション物のコレクターズ・ピース」に関しては、価格が下がっていないのが実情です。その背景には以下の理由がると思われます。
先ずアメリカに於いての「ビンテージ・ギター」は、日本の我々が認識している以上に「特別」な存在で、建国以降歴史の浅い彼らにとっては偉大なる「文化遺産」としての意味合いを持っている様に思われます。
アメリア人のディーラーと話をしても「フル・オリジナルでミント・コンディションのビンテージは、オーナーとしてその状態をKeepし後世に引継ぐ責任がある」という話をよく聞きます。その点からもその思いはしっかり伝わって来ます。
また日本における「コレクター」という言葉には「オタク」・「ネクラ」・「変人」といった良くないイメージが先行しますが、欧米においてはテーマを設定して物を収集する「コレクター」は、お金持ちのステイタスとされています。そんな彼らが探し求めている物が「ミント物」であり「レア物」である以上、ある意味「リーマンショック」等の経済危機とは別の世界なのかも知れません。
ビンテージ・ギターが「ギター」である限り弾かれて当然であり、弾かれればコンディションが落ち、必要に応じパーツも交換されるのも必然となります。よって当然の事ながら「フル・オリジナルのミント物」と呼ばれる「コレクターズ・ピース物」は全体の1割りも存在すれば良い方だと思われます。またその数は今後も減る事はあっても増える事はありません。
また、その大多数が既にコレクターのコレクションに入ってしまっているのが事実で、「レア物」同様にコレクターの気変わりやトレードの対象として市場に戻される以外には、通常はマーケットに出て来ないのが実情だと思います。
また我々ショップやディーラ、コレクターが必要に迫られて在庫商品やコレクションを処分するに際しても、手放しても将来買い戻せる可能性のあるプレーヤーズ物やレア度の多少落ちる物を放出する事はあっても、秘蔵しているコレクションが投売りされる事は将来を含めてまず無いと考えられます。
以上の通りビンテージ・ギターに求める物が異なる「プレイ志向の商品」と、「コレクターズ・ピース」のマーケットの2極化は、ストラトキャスターに限らず今後更に顕著化し加速すると思われます。
昨今お客様より「今ビンテージ・ストラトを購入し、価値は今後上がるのでしょうか?」という質問をよく受けます。
前述させて頂きました通り、現在無尽蔵に供給可能な製品でない限り、経済情勢の影響は受ける事はあっても、少なくとも、カスタムショップを含めた現行商品の、「新品で購入され、中古で手放す時は購入価格の1/3~1/2、中古の販売価格が新品価格の1/2~2/3程度」といった中古楽器市場ではないので先ずはご安心下さい。
但し、「確実に値上がりするか」とは正直断言は出来ません。
仮に「プレーヤーズ・コンディション」のビンテージ・ストラトを購入され場合で、Playを楽しまれ5~7年後に訳あって手放す時に、大幅な改造や修理等をされていないと仮定した場合、購入された金額で委託販売に出す事は可能だと思います。
この場合、消費税+委託販売の手数料分がロスする事になりますが、仮に当店でご購入された場合を前提に書かせて頂ければ、当店ご購入ギターの委託販売は、販売金額に関わらず一律8%でお受けしていますので、消費税と委託販売手数料8%の合計分がロスとなります。
考えれば、数年間所有・使用し、売却時に10数%程度しかロスを生まない商品など世の中に殆ど存在しないのですから、それはある意味凄い事だと思いますよ。
もちろんその5~7年間の間に市場経済が急成長し、ビンテージ・ギターの価格もまた急上昇に転じた場合には、プラスアルファが加味される事になりますが、多くは望まない方が無難だと思います。
但し購入後気に入らず1~2年以内に手放すという事態になった場合には、購入金額に近いお金が手元に戻るという事は絶対にあり得ません。よって前述した通り「自身にとっての「最後のギター」という気構えで「このギターと一生付き合う」その位の覚悟を持ってご決断下さい。「衝動買いは損の始まり」と肝に命じ、ご自身のベスト・ストラトを慎重に選んで頂きたいと思います。
有価証券や先物市場の様に、毎日売り買いの価格が決定しているモノではなく、趣味性が高い分市場経済動向の影響を受け易いのは事実で、先ずは投資目的での購入は止めた方が良いです。
本当に自分の好きなギターと出会い・納得出来たモノを購入し長く所有するのがベストで、気に入ったモノを長く所有した結果、手放す時に「殆んど損をしなかった」という結果オーライとなるのがビンテージ・ギターの世界だと思います。
私は自身の経験を含め、前述のご質問をお客様から頂いた場合、以上の様なお話をさせて頂いております。
私自身、”StratoーCrazy"を開店以降も、手持ち資金の余力があり良いギターに出会えた時は、個人コレクションとしてPre-CBSモノのカスタムカラー・ストラトを買い続けています。
反面、株・FX・投資信託・先物取引等は一切やりません。
今でもカスタムカラーのストラトを買い続けるのは、単純に「好きだから自己所有したい」と思うだけで、「将来値上がりするかも」・・・という考えは購入時には一切持っていませんよ!
但しコレクションのすべてを墓まで持って行く事は出来ない以上、「いつかは売却するかも知れない」・・・という事を念頭に、一切の妥協はせずに、欧米のコレクター納得するであろうフル・オリジナルのニアミント・コンディション以上の「コレクターズ・ピース」のギターに限定して購入しています。また将来手放す際には為替如何に関わらず、購入時の金額が手元に残れば最低OK程度に考えています。
他方何回も書かせて頂いておりますが、趣味性が強く、ビンテージ・ストラトが一種の「ギターに興味を持つ者の憧れ」の存在である以上、経済情勢が好転した際には一気に価格が変動する事は、過去の歴史が証明しております。
「いつが買い時か」と価格動向をウォッチするのではなく、ご自身の資金で無理せずに購入出来て、「これぞ!」という1本に出会った時が「貴方にとっての買い時」だと思います。ビンテージ・ギターと言えども中古楽器であり、同じギターは2本とない・・・という事実をお忘れにならず、良い買い物をして頂きたいと思います。
その上で本コラムが皆様のギター選びのお役に立てれば幸いです
(追記:2013年9月)
2008年のリーマンショック以降、前述の通りビンテージ・ギターの価格は世界的に大幅に下落しました。
今冷静に、専門分野であるビンテージ・ストラトキャスターのマーケットを振り返ると、リフィニッシュ物、リフレットやナットやその他パーツ交換のある「Playe's物」の価格の下落が顕著だったと思われます。
反面、「コレクターズ・ピース」と呼ばれるストラトに関しては、以前は殆んど売り物がマーケットに出ませんでしたが、リーマンショック以降は、「興味があるならXXドルで良ければ売っても良い」と云うオファーが増えた様に思われます。そのオファー金額自体は、決して安くはなく、高値で安定している感があるのが正直な感想です。
但し、2010年に入り、市場は一気に円高基調となり、1ドルが80円を切る状況がかなり長く続きました。
リーマンショック前は1ドル100円以上で取引をしていた訳ですから、1ドル=80円の状況は「コレクター・ピース」の価格が以前と同レベルとしても、単純に為替分で20%安くなっていた訳です。
話が多少ずれますが、私自身の経験を少し書かせて頂きます。
80年代にはビンテージ・ギターの魅力にドップリとはまっていた私ですが、その頃の日本は既に「バブル経済」の真っただ中でした。
その後ご存じの通りバブルは弾け、不毛の90年代が始まる訳ですが、良くも悪くも当時私が勤めていた会社や業界自体が、バブル景気に取り残された感があり、バブル崩壊後、当然経費削減の嵐は吹き荒れましたが、給与等がカットされる等の生活レベルでのマイナスはありませんでした。
反面、日本経済自体はバブル崩壊で様相は一変し、贅沢な商品は一切売れなくなりました。詳しい内情は判りませんが、日本のビンテージ・ギター市場も大きな影響を受けたのは間違いないと思います。
当時皆さんと同じギターを買う側の人間だった私でも判ったのが、バブルが弾けて半年程経過して以降、一気にビンテージ・ギターの店頭価格が下がりました。
今から考えれば、ショップでの在庫商品の現金化や、資金が必要なギター・オーナーの方の早期現金化を狙った格安委託販売だったのでしょう・・・
当時既にPre-CBSのカスタムカラー物のストラトキャスターにターゲットを絞りつつあった私は、この機会を利用し、正直可能な限りショッピング・クレジットを組み、年に2~3本の勢いで買い続けました(笑)
何せ、ショップでずっと憧れてウォッチしていた同じ商品が、ある日突然、前日までのプライス・タグの1/2~2/3に値下がりしていた・・・なんて事が日常的に起こっていたんですよ!
冷静に考えれば、景気の先行きが不透明な時期に、幾らバブル期の1/2~2/3程度に価格が下がったとは云え、100~150万円前後の高額商品を、ショッピング・クレジットを組んで買いまくる・・・我ながら凄いパワーだったと思います。
もちろん結婚はしていましたが、共稼ぎで子供は居ないという多少恵まれた環境だった事はありますが、バンド活動とカスタムカラーのビンテージ・ストラト以外には趣味もなくお金も使わず、クルマも同じ軽自動車を12年間乗り続けましたが・・・(笑)
でも、その当時「絶対将来値上がりするから」とか、「この価格なら安いから」という感覚ではなく、「好きだから買う」と云い純粋な購買意欲のみだったと思います。
この時期一気に増えたPre-CBSのカスタムカラー・コレクションが、後にStrato-Crazyを開店させる時の原資の一つとして大いに役立ってくれたのは間違いありません!
2008年のリーマンショックは、私自身としては、日本の90年代の「バブル経済の崩壊」で一度経験した事が、世界規模で起こった・・・と云う感じでした。
もちろん、ギターを買う立場から、販売する立場に変わり、当然ですが90年初頭のバブル崩壊が日本国内レベルだったのに対し、リーマンショックは世界規模と、それぞれに違いはありますが・・・
ご他聞に洩れず、リーマンショックがアメリカで発生して半年後位の時間差で、日本でも高額なビンテージ・ギターが見事な位売れなくなりました。当然ですが当店在庫商品や新入荷商品の価格は一気に下がりました。
そんな中、私自身は「何故こんなに安くなったのに皆さんは買わないのかだろうか・・・それ程好きではなかったのか・・・」と実はずっと自問自答していました。
前述の通り、90年代のバブル経済崩壊後、ビンテージ・ギターの価格が一気に下落した際に、Pre-CBS期のカスタムカラー・コレクションを一気に増やした私と、同じ考えをお持ちの方は居なかったのでしょうか・・・
私自身は、リーマンショック以降、当然ショップの売り上げは激減し経費削減等かなり血を流しましたが、反面「コレクターズ・ピース」の売り物のオファーを貰った際には、円高環境を生かし可能な限り購入し、更なるコレクションの充実を図って来ました。
話をビンテージ・ストラトのマーケットに戻させて頂きます。
リーマンショック後、2013年頃にはアメリカ経済は回復基調となり、市場では5~7万ドル規模の高級車の販売が増加しているというニュースを耳にする様になりました。
ビンテージ・ストラトキャスターの価格を見ても確実に上昇に転じ、アメリカのディーラー仲間との会話の中でも、2012年以降「底値は脱した」と云う表現を耳にし現在に至ります。
但しビンテージ・ギターの市場が形成された1970年代以降、一度も順調に右肩上がりの価格上昇カーブを描いて来た北米市場が、リーマンショック前の急激な価格上昇と、その後の暴落を経験し、学習しない訳はありません。
今後は、価格高騰の主要因となった「投機マネー」のマーケットへの再注入は考え難いので、緩やかな右肩上がりとなるのではないでしょうか。
また、同じく前述させて頂いた、「Player's グレード」と「コレクターズ・ピース」の2極化は、今後更に加速して行くのは間違いないと思います。
6)ビンテージ・ストラトキャスターのサウンド
私自身がビンテージ・ストラトにハマッタ原因も、もちろんその「サウンド(トーン)」に惚れてしまったからに他なりません。
昨今、現行ストラトでもレリック加工を含め、外観上かなり「ビンテージ」に肉迫する製品も多数出回り、詳細スペック的にもオリジナルを良く研究し、良い製品が増えてきました。
ではその俗に言う「リイシュー物」がビンテージか?と言えば、残念ながら特に「サウンド面」においてはまったく別モノと断言せざるお得ません。あくまでも「今現在の良いギター」であって「ビンテージ・ギター」ではないと私は言い切れると考えております。
仮に現行商品が「ビンテージ・サウンド」をしっかり再現しているのであれば、我々ビンテージ専門店は単なる「懐古主義の骨董品屋」としての存在価値しかなくなってしまいます。
フェンダー社が「リイシュー物」を発売したのが1982年、それ以降カスタムショップ製品、フェンダー・ジャパン製品と、多数の製品が世に出ていますが、発売以降20数年経過した現在まで、「ビンテージ・ストラト」の人気が陰る事なく、今でも多くのPlayerを魅了し続けている事実からでもお判り頂けると思います。
また、お客様に良く質問されるのですが、現行商品は20・30年と弾き続ければ「ビンテージ・ストラト」と呼ばれる独特なトーンを持つ存在に成り得るか?といえば、それも明確な根拠がある訳ではありませんが「NO」だと思います。
ギターの音に関する記述で「原音」と「倍音」という表現を雑誌等でご覧になった記憶がる方も多いと思います。
私自身は「音」に関する専門知識を持っている訳ではありませんので、的確は表現をする事は出来ず、また記述した内容に誤りがある可能性も多々ありますので、以下感覚的に書かせて頂きますが、「原音」とは字の如くエレキ・ギターで言えば、弾いたノートそのものがアンプから出てきた音と解釈してください。また「倍音」は「原音」の周囲を包み込む「空気」をイメージして下さい。「原音」をやさしく包みその音に深みと広がりを加味するものと解釈すると感となくイメージは伝わると思いますが如何でしょうか?
現行商品に搭載されているピックアップは、「工業製品」としての技術革新を含め、その本来の目的である「弦の振動を拾い増幅して音に替える」機能において、ビンテージと呼ばれる頃のモノに比べ格段に進歩し、かつノイズの低減を含め良い製品になっていると思います。
よって「工業製品」的に良いピックアップが搭載されているギターは、ノイズも少なく「原音」を忠実に再現してくれます。
他方ビンテージ・ギターの場合、ピックアップ自体が古いモノでは60年以上前の製品で、ポールピースの着磁そのものも経年変化により多少の劣化も見られるでしょうし、その他の要因を含めその出音は「原音」に対しかなり「倍音」が混ざった状態だと思われます。その結果アンプから出てくるサウンドは深みと広がりのある何とも言えないトーンが生み出される・・・と私は解釈しています。
以上の書き方をすると「ビンテージ・トーンの決め手はピックアップか!」を理解してしまいますが、それは誤りで鳴りの基本は「木部」で、ストラトの場合には「ネック」と断言しても良いと私は確信しています!
実際にギブソン・レスポールに関し、現行ヒストリック物に50年代のオリジナルPAFを搭載しても、その出音はオリジナルの「バースト」とは別物で、50年代のコンバージョン・レスポールに現行の57クラッシックPUを搭載したギターの方が遥かにオリジナル「バースト」に近いトーンを奏でます。
同様にカスタムショップ製のストラトに、60年代のオリジナル・ブラックボビンPUを搭載しても「何じゃコレ?」と思う期待外れのトーンですが、逆にカスタムショップ製のストラトに、60年代のオリジナル・スラブNeckを組込んで調整すれば「オオ!」と唸れるトーンを醸し出しますよ・・・(実際にすべてのパターンを実行していますので、間違いありません・・笑)
当店はあくまでビンテージ・ストラトが主流で、現行商品の扱い量は極端に少なく断言は出来ませんが、個人的に思うのは国内外の現行製品のメイプルNeckに使われているメイプルの素材が良くないのではないでしょうか。
目が詰まった密度の高い硬いメイプル材とは思えない、極端な言い方をすれば「指で押したら凹みそう・・・」な位ヤワな印象を持ってしまうのは固体が多い様に感じるのは私だけでしょうか・・・また一時のカスタムショップ製品に見られた「フレイム・メイプルNeck」に至っては「化粧版か?」と思わせる程ヘナヘナな状態で反りまくり、調整不可能な悲惨な物を何本も見ています。
弦の振動を伝える大元のネック、フェンダーの場合にはメイプル材がサウンドの要であり、密度があり目が詰まって固いというのは最低条件だと思います。
(余談になりますが、稀に見られる「バーズアイ」は硬いメイプル材にしか出ないので、「バーズアイ・メイプルのNeckにハズレなし」と言うのは理にかなっている」と思います。)
また、これは私の完全な私見ですが、ビンテージ・ストラトのトーンの良し悪しはブリッジPUを中心に見極めて頂きたいと思います。
当店で試奏を終えられたお客様のギターを戻す際にチェックしますと、9割以上のギターがフロントPUのポジションにPUセレクターがセットされています。私はストラトの一番の魅力はブリッジ・ポジションでの攻撃的なアタック感のあるサウンドだと常日頃より思っていますし、フロントPUに関しては、高さセッティングがちゃんと調整されていて、音がコモッたり揺れたりしなければ「良い音」が出るに決まっていると思っています。逆にブリップPUの音が抜けない固体は、いくら調整してもそのキャラクターは劇的にかわらないと思います。
ブリッジPUのトーンが抜けているストラトは”大当たり”だと思いますよ!是非参考にして下さい。
また、JazzをPlayする方でなければ、フロントPUを多用されるのは「真のストラト弾きではない!」と言い切ってしまいますよ!ブリッジPUを使いこなしてこそ「真のストラトPlayer」です。(笑)
天才ストラト・マスターがジェフ・ベックと言って否定される方は殆どおられないと思いますが、参考までに申しますと、彼もPlayの95%以上がブリッジPUですよ!(もちろんブリッジPUに対してもトーン・コントロールが可能な様に、オリジナルに対し回路変更は施されていますが・・・)
A>年代別ストラトキャスター・サウンド概要
「これぞこの年代のビンテージ・ストラトサウンド」と一言で言い切れない程、実はギター毎の個体差があります。また「サウンド」自体文章で表現するのが難しく、また弾かれる方のピッキングやフィンガリング、使用されるアンプ等によってもその差がかなり出るのも事実です。
お近くのビンテージ・ショップ等に出向いて、実際に手に取ってご自身で弾かれて体感されるのが一番なのですが、昨今価格的にも高くなり、「どんな音がでるのか知りたい!」というだけでは試奏もし難い状況になっております。
よってザックリと年代毎のビンテージ・ストラトのトーンについて別項にまとめてみました。代表的なトーンのイメージとしてご参考になれば幸いです。
*サウンド・キャラクターを前提にした場合の大雑把なビンテージ・ストラトキャスターの区分
・54年メイプルNeck
・55年~59年メイプルNeck
・59年~64年中期ローズNeck(ブラックボビンPU仕様)
・64年後半~68年中期ローズNeck(クロスワイヤーのグレイボビンPU仕様と67年ブラックボビンPU仕様)
・68年後半~76年
・77年~79年
・80年~82年初期(”X-1”ブリッジPU仕様)
B>Body材の違いよるビンテージ・ストラトキャスター・サウンド
別項での記述と重複しますが、概要をまとめてみたいと思います。
ご存知の通り、ビンテージ・ストラトの場合、年代やカラーによってBody材として主にアルダーとアッシュの何れかが用いられています。また64年には一部試験的にマホガニー、60年代後半にはメイプル、80年代初頭にはウォールナット等の材も採用されています。(64年製のコリーナBodyのストラトをつい最近見ましたが、現存数2本との事ですので「採用された」とは言えませんね・・・)
ここでは主に用いられたアルダーとアッシュの「サウンド」に関する見解を記述させて頂きます。
54年製のストラトに関しては、「年代別ストラト・サウンド」の別項でも書かせて頂きましたが、私自身「54年製はすべてが別物」と考えておりますので、アッシュ材に関しては55年製以降を前提に書かせて頂きます。
55年~56年中頃迄及び、それ以降のブロンド・フィニッシュ、72年から新色に追加されたナチュラルに関してはアッシュ材が採用され、それ以外はアルダー材がストラトBodyの基本となるのは既にご存知だと思います。
まず55年~68年前半頃の期間のアッシュ、アルダーのBody材によるギター・サウンドの違いに関しては、既に60年前後の月日が経った経年変化を含めた個体差の一要因に過ぎず、明確は差はないと断言出来ます。要はBody材の差異以上に各ギターが、その使用された環境やリフレットを含めたメンテやレペアのされ方、経年変化の影響の受け方・・・等で生じる固有のサウンドの個体差が大きくなったのだと考えれます。
但し、「Bodyの重量の差」は確実にその出音に現れます。50年代・60年代のアッシュ材で重めのストラトに関しては、特に低音の出方が凄く重圧で存在感のあるトーンを醸し出します!
逆に69年以降ピックアップの巻き数が少なくなったタイミング以降、アッシュとアルダーのBody材の違いはその出音に反映される様になったと思われます。
ピックアップの変更と同じく、この時期のアッシュ材はアルダー材に比べ多少重めの固体が多く、その重量さの影響もあり通常のアルダー材のストラトが「ジャッキ」としたブライトな切れの良いトーンが特徴なのに対し、MidとLowの音が加わりかなり「ファット」なトーンが体感出来ると思います。
また以前リフィニッシュ物の64年製のマホガニーBodyのストラトを所有していた経験がありますが、購入した時にはマホガニーBody・・・すなわちギブソン系のMidを中心にしたファットなトーン・・・を連想し期待していましたが、自身の機材で鳴らし、自分のメインの愛器(アルダー材)と比べた感想ですが、「何じゃコレ!」という程「期待ハズレ」だったと記憶しています。逆に材が柔らかい特性上、ネック・プレートのネジを締めこんでもいくらでもネジが締まってしまうマイナス面のみが強調され、早々に手放してしまいました。正直ストラトのBodyにマホガニー材はミス・マッチだと私は確信しています!
但し存在自体がレアですので、「オリジナル・フィニッシュのマホガニーBodyのストラト」であれば「超コレクターズ・ピース」になることは確実ですね。
(でもリフィニッシュ物や塗装の剥がし物の場合にはコレクターズ的な価値はないので、一般的には手を出さない方が無難だと思いますし、音の特異性を期待して手を出す事は特にお勧め出来ませんよ!)
メイプル、ウォールナット、コリーナ等の他の特殊材Bodyのストラトの個人的な所有歴も、ショップ在庫での扱いもありませんが、ショップで見かけた印象ではとにかく「重く」Playするにはにはキツイという印象が残っています。実際に音を出した経験がないので、出音に対するコメントは出来ません。(コリーナBodyのストラトに関しては実際に手に持っていないので、重さを含めコメント出来ません・・・)
<2019年2月追記>
当店の65年製ブロンド・フィニッシュのストラトが入荷し、当然アッシュBodyだと思っていたのですが、入荷時の調整・セットアップを行ってアンプで音を出して何となく「違和感」を感じ、お付き合いのあるビンテージに精通したリペア&ギタテクの方に見て頂いたら、なんと「メイプルBody」のオリジナル・ブロンドのストラトでした!
前述の「違和感」は、悪い意味合いではなく「普通のアルダーやアッシュBodyの固体差とは異なるトーン」と云う意味です。また重量感のあるアッシュBodyのストラトの場合、間違いなくLowがはっきり出るため、「ファット」な印象のトーン・キャラになるのですが、当然入荷したメイプルBodyの65年製ブロンドも、アルダー材に比べると重量感はあるのですが、そのトーン・キャラクターはLow側に振れず、イメージとしてはハイ側に振れたイヤミのない「ブライト感」のある印象を受けました。
C>リフィニッシュのストラトキャスターのサウンド
お客様に「リフィニッシュされる事で音は変わりますよね?」とよく質問されますが、実際には余程厚く塗装が塗られるか、もしくはリフィニッシュの際塗装を剥す工程でボディーを削り過ぎて薄くなってしまったギター以外では、大幅に音色の変化はないとお考え頂いて結構です。
リフィニッシュのストラトの場合、やはり長年使用されたギターが大多数で、それが故に殆どのストラトがリフレットや若干のパーツの交換を受けています。よってフィニッシュの変更よりも、「現状どの様なパーツ仕様となっているか」・・・の方が「サウンド」的には重要だと思います。その変更内容を事前にショップに確認した上で、やはり「弾く」という前提で直接ショップに出向いて、実際に手に取って弾かれてみるのが大前提だと思います。
また、リフレットの有無やその打ち替えられたフレットの種類によるサウンドの変化はかなり明確に体感出来ると思います。
「音」は厳密には「フレット」で出しますので、高さが十分に残ったフレットと減ってしまったフレットでは、その出音に明確な差が生じます。
ビンテージとしての「骨董的な付加価値」を考える上では、一度リフレットされてしまえばオリジナルに戻す事は不可能なため、「オリジナル・フレット」は「コレクター・ピース」のギターには絶対条件なのですが、ことPlayする上では「減ってしまったフレット」では十分に良い音は出せません。
よって「ガンガン弾けるビンテージ」をお探しの場合、リフレット自体はさほど気にされなくても良いと思います。逆に多少減っているフレットのギターを試され、その音が気に入った場合には、購入後にリフレットを考えるのも良いと思います。リフレットされる際のフレットの選択を間違わなければ、そのサウンドは良くなる方向でこそあれ、決して悪くなる事はありませんのでご安心下さい。
既にリフレット済みのギターの場合、そのフレットの種類はサウンドにかなり影響していますので、ご自身で必ず確認して下さい。
フレットにもかなりの種類がありますが、ザックリ分類しますと「ビンテージ仕様」、「ミディアム・ジャンボ仕様」、「ジャンボ仕様」の3種類に大別出来ると思います。
「ビンテージ仕様」とは、その言葉の通りオリジナルに準じた「細めで高さもそれ程ない」フレットで、ビンテージ・ギターのリフレットの際の定番となります。
「ミディアム・ジャンボ仕様」には更に2区分あり、フレットの幅自体はビンテージ仕様に順じ、高さが多少高めのジム・ダンロップの#6105に代表されるモノと、ギブソン系に代表されるフレットの幅自体がオリジナルに比べ広幅で、高さはオリジナル程度のモノとなります。
また「ジャンボ仕様」はジム・ダンロップの#6000や#6100に代表される、かなり太く・高さも高い「ワイド仕様」となります。
サウンドとは直接関係はありませんが、リフィニッシュ物のストラトキャスターをご購入される場合、「いつ頃リフィニッシュされましたか?」「オリジナルの色は何色ですか」という質問をよくお客様から頂戴します。
他店さんの場合も同じだと思いますが、通常リフィニッシュ物はリフされた現状で入荷します。その際に手放す方なり、購入したディーラーなりから、特に説明を受けた場合には「リフされた時期」等のご説明可能ですが、大概は「不明」だとお考え下さい。
またニトルセルロース・ラッカーを用いて丁寧リフィニッシュされた後に相当の時間が経過した場合には、オリジナル同様にトップ・コートの色焼けやウェザー・クラックが発生します。その様な固体の場合には「相当以前にリフされたと思われます」というお答えは出来ると思います。
同様に販売前の検品・チェックの際にネック・キャビティー等にオリジナル塗装の一部が残っていた場合には、「オリジナル・カラーな何色」とご説明が可能ですが、確率的にはかなり低いとお考え下さい。
リフィニッシュされたストラトは「Playするビンテージ」という位置付けになると思いますが、やはり「Looks」の良し悪しは価格にかなり影響を及ぼします。
リフされて相当歳月が経過しBody塗装の色焼けやウェザー・クラックが発生し、「これオリジナル?」と思わせるオーラを放つ個体は価格的にも高くなり、「去年リフされたの?」と思われる新品みたいにピカピカの固体や、リフされた際に削られ過ぎてBodyのシェイプが変わってしまった個体は安めの価格設定になります。
また、ネックがオリジナルなのか、ネックもリフィニッシュなのか(デカールはオリジナルか貼り替えか)、その他パーツ変更の度合い等によっても相当に価格の差が生じる傾向にあります事を念頭に選ばれると良いと思います。
オリジナル塗装を剥す工程での「Bodyの削り過ぎ」に関しては、ショップに展示されている同年代のオリジナル塗装モノと比べて見れば、容易に判断出来ると思います。
(特に6・1弦のホーン部分が削り過ぎで丸みを帯びた形状となってしまっている固体はカッコ悪いですよね!)
あと、ボディーの厚みが削り過ぎて薄くなってしまっている固体は、Body裏からトレモロAssyのイナーシャ・ブロックが飛び出してしまっているギターも少なくありません・・・この場合オリジナルに対し最低でも約2mm程度はBodyが薄きなっていると考えて間違いありません。
(リフ物の場合トレモロ・バックプレートが欠品している固体が多いと思いますが、ショップに行かれた場合もしくは電話にて問合せをした際に、「バックプレートはちゃんと装着出来ますか?」とお尋ねになると良いと思います。イナーシャ・ブロックがBody裏に飛び出している場合、バックプレートは装着出来ません。Bodyの厚みが気になる方は、チェックの目安になりますので参考にしてください。)
D>ミント物のストラトキャスターのサウンド
よく「ミントのギター鳴らない!」とおっしゃる方がおられますが、多数のミント・ギターを扱わせて頂いた当店の経験から、それはこの場を借りて「間違いです!」と断言させて頂きます。
ミント物の個体でも、ちゃんと調整さえしてあげればシッカリ普通レベル以上の「ビンテージ・トーン」を醸し出してくれます。
但し、昨今「ミント・コンディション」のギターは完全に「コレクター・ピース」化し、通常コンディションのギターとは別次元の価格体系となってしまいましたので、ミント物を「サウンド重視」で選ばれ、購入後ガンガンガンガンPlayされるお客さまもさすがに居られないと思いますが・・・・
反面「弾き込まれたギターは音が良い!」と言われてるのは本当です!何故か?と言われても明確な回答は出せないのですが、やはりネックがビリビリと振動するのが手に伝わる固体が多い様に感じます。
その代表例が60年代後半~70年初頭に僅かに存在する「貼メイプルNeck」のストラトキャスターでしょう。当時FenderではローズNeck以外のストラトは存在しませんでしたが、一部にメイプルNeckのストラトが存在し、ジミー・ヘンドリックス、リッチー・ブラックモア、デイヴ・ギルモア等が愛用したと云うのは皆さんご存知だと思います。
1959年中頃にフェンダー社は、以前の1ピース・メイプルNeckを止めて、すべての製品のNeckを、メイプルNeckにローズ指板を張り合わせる「ローズ指板Neck」に変更してしまいました。(理由は定かではありませんが、当時メイプル・1ピースNeckを採用していたギター・メーカーはFenderのみで、ギブソンを含めた他社製品を意識した結果ではないかと考えられます。)
当然すべての製品での一斉仕様変更だったため、従来からFender製品を愛用していたミュージシャンの中には「違和感」を感じた人達を存在し、その顧客に対しFender社が提示した答えが「貼りメイプルNeck」となります。
50年代のメイプルNeckと同仕様のNeckを供給するには、専用の工程や治具設定が必要となりますが、「貼りメイプルNeck」の場合には、ローズ指板に代わるメイプル材の指板を準備さえすれば、ローズNeckを製造同じ工程・治具で製作が可能で、いかにも合理性を重視するFenderらしい手法だと思います。
当然「貼りメイプルNeck」に関しては59年以降のFenderの当時のカタログやプライス・リストに一切の記載は見られず、あくまでもミューjシャンからの個別のリクエストに都度対応していたと考えられます。
実際に当店でも64年製以降何本となく「貼りメイプルNeck」のストラトを取り扱った経験があり、やはり68年後半以降の「モダン・ロゴ期」の貼りメイプルNeckのストラトに関しては市場でも広く認知され現在に至っています。
(前述の通り、当店でも64年製スモールHeadの貼りメイプルNeckを始め、65年製・66年製・67年製と「モダン・ロゴ期」以外の貼りメイプルNeckストラトを扱って来ましたが、以前ご来店されたお客様が「61年製スラブ期のサンバーストの貼りメイプルNeck」のストラトを所有されている・・・とのお話を伺った事があります。残念ながら現品を拝見する事は叶いませんでしたが、十分に存在する可能性は大だと思います。)
「貼りメイプルNeckのストラト」に話がズレてしましましたが、前述の通りジミー・ヘンドリックスの使用で一躍脚光を浴びた「貼りメイプルNeckのストラト」ですが、当然当時一般に販売されていたストラトはすべて「ローズ指板Neck」となり、個別にオーダーしないと入手困難な仕様となります。そのオーダーの幾程のエキストラ・コストが発生したかは定かではありませんが、オーダーしてまで入手したギターをPlayしないミュージシャンは皆無で、結果「貼りメイプルNeckのストラト」は、その殆どがかなり弾き込まれた個体となっています。ほぼ9割以上の固体がリフレット・ナット交換が施され、そのリペア作業と際にメイプルの指板部分がラッカー・リフィニッシュが施されたり、クリアー・コートによるオーバー・スプレーが施されています。
(余談となりますが、私の経験上現在オリジナル・フレット&ナットがKeepされた「貼りメイプルNeckのストラト」を探すことは困難だと思います。)
その様に納品時からガンガンPlayされ続けて来た「貼りメイプルNeckのストラト」・・・当然ビンテージ・ストラト専門店の当店でもかなりの固体を扱って来ました。入荷後のセットアップ・調整を終了した個体を都度アンプでチェックしますが、そのチェックをを終えた当店スタッフの共通の認識が、「貼りメイプルNeckのストラトにハズレなし!」です。ブリッジPUの音抜け感、弦の振動がビリビリと伝わってくるNeck・・・弾き込まれたギターが紡ぐ絶品トーン言うのでしょうか・・・とにかく感動しますよ!(笑)
但し、反面よく弾き込まれたギターの場合、長く弾かれた以前のオーナーの癖が良くも悪くも残っている傾向があります。
入荷して調整作業に入る前にアンプでチェックした時は「なんじゃこれ!」とビックリする程鳴っていたギターが、当社の通常入荷時に行う調整・セッティングを施した途端、普通の鳴りのギターになってしまったり、ポジションによって音のビビリや詰まりが出てしまう・・・というケースを何回も経験しています。(その場合は、慎重にオリジナル・セッティングに少しずつ戻しながら、ベストな状態を模索するっといった気の遠くなる調整を行う事になります)
E>カスタム・カラーのストラトキャスターのサウンド
「カスタム・カラーのストラト」とは、サンバースト以外のブロンド・フィニッシュを含めたカラー物のストラトキャスターの事を指すのは既に皆さんご存知だと思います。
54年のストラト誕生以来74年迄の間、実に多くの「カスタムカラー」のストラトキャスターが存在します。
50年代のメイプルNeckのストラトに関しては、ブロンド・カラーは56年7以降は当時でも一般に追加料金でオーダー可能でしたが、それ以外のカラーに関しては特注品的な色合いが強く、当時でも一般には入手が難しかったと思われます。
逆に1960年からは、フェンダー自体が「カラー・チャート」を作成し主要ディーラーやショップに配布したため、ブロンド・カラー同様に10%の追加料金で入手が可能となりました。
「カラー・チャート」が作られた1960年以降で考えた場合、一般のお客さんがカラー・チャートを見てショップにオーダーしていた・・・と考えるより、ショップなりディーラーがフェンダー社にオーダーする際に、色指定をしていたと考えた方が良いと思います。
いずれにしても「オーダー物」である事に違いはありませんが、こと「サウンド」に関しては通常のサンバーストと何ら変わりはありません。
たまにお客様で「カスタム・カラーのストラトはオーダー物だから、通常のサンバーストとは音が違いますよね!」とおっしゃる方がおられますが、それは幻想に過ぎませんよ。
「サウンド」は同じギターで色が違うだけで価格はサンバーストの数倍~10数倍・・・これが「カスタムカラー・ストラト」の世界です。よって現在では完全なコレクターの領域に入ってしましたね・・・
F>改造物のストラトキャスターのサウンド
フェンダーのギターはネックとボディーがボルトで固定され、1本のギターを構成する性格上、理論的に如何なる組合せも可能となります。その結果ネックとボディーの年代が異なるストラトをたまに市場で見かけます。
また当社の場合そのメリットを生かし、ストラトのボディーにテレキャスターやジャズマスターのネックを組込んだコンポ・ストラトを何本かプロデュースさせて頂いております。
私としては、これを一つの「ビンテージ・ギターをベースにしたコンポ・ギター」と考えれば良いのではないかと思っております。
年代が異なったボディー&ネックの組合せの物が、「オリジナル」と称して高額な価格で販売されるのであれば、それはかなり「問題」だと思いますが、正しく商品説明がなされていれば、当然「骨董的価値」は落ちる訳ですから、オリジナルの物に比べぐっと手を出し易い価格になる訳です。
あとはそのギターそのものが、「しっかり調整されているか否か」・・・これが「サウンド」にとっては重要だと思います。もちろん「3ケのピックアップすべての年代・仕様がバラバラ」等、調整の施しようがない固体もあるとは思います。いずれにしても、Body・Neck・主要パーツの年代が異なるから即「ジャンク」と判断するのは如何なものかと思います。先入観を持たず、手に取って試してご自身で判断されるのが良いと思いますよ!
蛇足ですが、たまに現行ストラト・ボディーにビンテージのNeckが組込まれたコンポ・ストラトを見かけますが、これはネックがジャンク品でなければ「買い」だと思います。(もちろん価格的に安くないと意味がありませんが・・・)
何度も書かせて頂きましたが「サウンド」の7割はネックが占めます。よってその7割分は既に「ビンテージNeck」を組み込む事でカバーされている訳です。あとは入手後にピックアップを色々と試してみるなり、自身のお好みに合わせて徐々に手を加える価値があると思います。
他方、お気に入りのカスタム・ショップ製のストラトに、「ビンテージのオリジナル・ピックアップを組込みたい!」とおっしゃる方の相談もよくお受けします。これは正直まったく意味がないと思います。ピックアップに10数万円のお金を掛けても、ビンテージのトーンはまったく得られないと思います。
その他では、「改造モノ」としてはリフレット、ピックアップのリワインドや交換、ボディーのザグリ、トレモロやピックガード、チューナー等のパーツ交換・・・数々のケースが考えられます。
まずリフレットですが、確かに「サウンド」に対する影響は確実に出ます!但しオリジナル・フレットでかなり減っている固体に対しては、オリジナルに準じた仕様のフレットを用いたリフレット済みのギターの方が確実に鳴ります。
また、リフレットの際に「どの様なフレットを使用されたか」により「出音」の差も確実に出ます。一般的に「ジャンボ・タイプ」のフレットを使用した場合、出音は「生音」・「アンプからの出音」共に確実に大きくなりますね!
元来フェンダーのオリジナル・フレット自体がそれ程高さがある物ではありません。その上50年代・70年代のメイプルNeckの場合、フレットを打った後に塗装をする工程上、フレットのある程度の部分は塗装に埋もれてしまいます。
最悪なのが70年代のメイプルNeckのオリジナル・フレットが、既にショーキングするのが厳しい位に減ってしまったパターンだと思います。意外に思われる方がおられますが、リペアの方にリフレットを依頼される際に、ローズNeckとメイプルNeckではその作業内容が異なるため、作業費用が異なるのは当然ですが、50年代と70年代のメイプルNeckを比べた場合、70年代の方が遥かに作業費用は高くなります。
よって70年代のメイプルNeckのストラトで「フル・オリジナルで、かなりフレットが減ってしまっている」ギターを購入した場合、その後のリフレット等で予想外の出費を強いられてしまうケースが少なくありませんので注意してくださいね!
Playすることを主体にビンテージ・ストラトをお探しの方には、「リフレット済みのギター」を中心に探された方が良いと思います。特に70年代のメイプルNeckの場合には、ミディアム・ジャンボ仕様のフレットがチョイスされたリフレット物のストラトは、凄く弾き易いですし、音の立ち上がりも良くてお勧めです(もちろんリフレット・・・という事でオリジナル物より価格的にも安くなるメリットもありますよ!)
次にピックアップに関してですが、やはりビンテージ・ストラトを購入する以上、ピックアップにはコダワリを持って頂きたいですね!お客様から「Neck・Bodyの木の部分はオリジナルで、その他は交換されていても良いので安いビンテージありますか?」とのお問合せをよく受けます。多分この方々はPlayを前提にしたビンテージをお探しなのだろうと思いますが、仮に「サウンド」を主体にビンテージ・ストラトをお探しなら、個人的に言わせて頂ければ「Neckとピックアップ」にコダワルべきではないかと思います。
サウンドの7割がネックだとすると、残りの1~2割がピックアップ、次にボディー、最後のその他パーツ(ブリッジ、ペグ、チューナー等)といった具合に影響して来ると考えられます。
よって、仮にピックアップが最近のモノに交換されたビンテージ・ストラトが入荷すれば、販売価格はかなり安めの設定になると思います。もちろんそのギターを試されて、ご自身のイメージに近く気に入れば、それは良い出会いであり、価格的にも魅力的であれば迷わず購入されれば良いと思います。但し、まずは安いのでこのギターを購入し、後に「オリジナル・ピックアップ」をお金の余裕が出来た時に探して交換しよう・・・とお考えになったとしたら、それは最終的に高い買い物になってしまう可能性が大でお勧め出来ません。仮にそのギターが50年代~60年代中期頃までのストラトであれば、オリジナルのブラックボビンPU自体が殆ど市場に流通していませんので、入手するのはかなり困難だと思います。
ではリワインド(巻き直し)のピックアップが搭載されている場合はどうでしょうか。実際に「リワインド」は読んで字の如く後に「コイルを巻き直し」されたピックアップの事を指しますが、その作業のクオリティーによって「サウンド」はまったく異なってしまいます。当時使用されていたワイヤーを用いて,オリジナルのフェンダーPUを熟知している人間が巻き直されたモノであれば、実際に「オリジナルPU」との音の差はまったく感じられないでしょうし、現行仕様に近い形で巻き直されれば、やはり音のニュアンスは多少異なってしまう可能性があります。それでも、最近のリプレイスPUに交換されているギターよりは、やはり数倍良いと思います。(場合によっては、購入後再度リワインドし直し、よりオリジナルに近づける事も可能です)
また「サウンド」には関係ありませんが、俗に言う「改造モノ」に関しては、購入される時の販売価格の「割安感」があるの一方で、仮に将来手放される際には、通常商品以上にマイナス査定を受けてしまうのは否めません。
特にネックやボディーの木部に手が加わってしまったギターにはその「マイナス査定」の傾向は顕著に現れてしまいます。
仮に、ボディーにハムバッキング用のザグリ加工が施されたギターを実際に手に取って音を出され、ザグリ加工での出音の違いを体感出来る方は殆どおられないと思います。すなわち「プレイを楽しむギター」としては何ら問題がないのが事実です。
よって、「このギターを手放さず、ずっとプレイを楽しむ!」とお考えになれば、サウンド重視で購入される方の究極の「プレイヤーズ・ビンテージ」と言い切れると思います。ご自身で納得した上でご購入されるのであれば一つの究極の正しい選択だと思います。
7)ビンテージ・ストラトキャスターのNeck
ストラトキャスターに限らず、ギター選びの際に「サウンド」とは別に、皆さんが気になるポイントがNeckのシェイプを含めた握り心地ではないでしょうか?
当店でもお客様から「普段はギブソン系をメインで弾いているがストラトも1本欲しい。持ち替えて違和感のない年代のお勧めはありますか?」といったご質問もよく頂きます。
このご質問へのお答えですが、ギブソン系ギターとフェンダーのストラトでは、まったく違和感なく持ち替えるのは無理があるとお答えせざるを得ません。
既に皆さんご存知の通り、通常のギブソン系ギターはミディアム・スケールでフラット指板なのに対し、ストラトはフル・スケールで、指板部分にはかなりキツメのアールが設定されていますので、実際にギターを持った時のグリップ感は大きく異なります。
指板のアールに関してですが、82年のFender USA製のビンテージ・リイシュー以降現在のカスタムショップ製品を含めて、すべてのストラトのNeckにはアールが設定されています。(但し、近年ではカスタムショップ製を中心に、指板のアールがかなりフラット気味の設定となっている個体も多く見かける様になりました。)
また現行商品に対しビンテージ・ストラトの方がアールの設定は更にキツ目になっています。この指板部分のアール設定に関しては、あくまでもオリジナル状態での現行商品とビンテージとの比較となります。
ビンテージ・ストラトの場合長い年月Playされた結果、既にリフレットが施された固体が大多数となります。またリフレット作業では、多くの場合にフレットを抜き取った後に指板部分をサンディングし、その後に新しいフレットを打つ・・・という工程が一般的となります。その結果Fender社にて出荷当時時に設定されていた指板部分のアールは、リフレット作業時の指板部分のサンディング工程によって変化を受ける事となります。よってビンテージ・ストラトの指板部分のアールに関しても、ギター毎の個体差の一つとなります。
また当時のFender社の場合、ナット幅がA・B・C・Dの4種類設定されており、全体の出荷数量の大多数を占めるBネック(ナット幅約42mm)に対し、幅狭のAネック、幅広のC・Dネックが存在します。ストラトの場合には経験値で恐縮ですが97%程度がBネック、残り3%程度の半分以上が幅狭のAネック・・・といった具合でしょうか。
当店の場合、開業以来延べ2,500本以上のストラトを扱ってきましたが、実際にAネックは過去に数本で、Cネックモノが2本、Dネックにゼロ関してはといった具合です。
よってナット幅に関しては、通常のBネックの中で好みを選ばない限り、AもしくはC・Dネックにコダワッテ探すと、ギター自体が見つからないと思います。
ナット幅は別にし、実際にネックを握った時に気になるのがネック裏のシェイプ(肉付き)ではないでしょうか。
概して言える事は、ビンテージのストラトに関しては50年代のギブソンに見られる様な「極太」なネックは殆ど存在しません。
またカスタムショップ製品に代表される現行商品の「XX年製」という表示をビンテージ・ストラトのNeckとイメージした場合、前述しました通指板部分のアール設定の違いを含め、実際のビンテージ・ストラトのネックとの差が生じるのも事実です。現行商品は指板がかなりフラット気味の設定になっている関係で、ネックを握った感覚では「太く」感じると思います。
ではネック・シェイプに限定して、以下年代別の仕様をザックリご説明します。
但し概要はオリジナル状態のネックをベースに、私の私見的に記述しております。「太い」「細い」等は感覚的なものですの個人差もある点をご考慮ください。
また長年の使用の過程にて、リフレットやリフレットの際にの指板部分の矯正の有無、ネックのリシェイプ等により、オリジナルの状態より変化している場合も多々あります(特に50年代のメイプルNeck)
以上を踏まえ、参考程度にお考え頂き実際にショップに足をお運びになってご自身にて確かめられる事をお勧め致します。
*54年製メイプルNeck
ガッチリしたUシェイプに対し、若干ですが軽く「V」のシェイプが加味された独特なネックとなります。手にジャスト・フィットし「苦手」と感じる方は殆どおられないと思いますよ。
*55年~56年中期製メイプルNeck
太めの「Uシェイプ」でかなりのグリップ感を感じられ、50年代のギブソン系の太めのネックに近い唯一のNeckではないかと思います。
*56年中期~58年初期製メイプルNeck
通称「VシェイプNeck」と言われる時期のモノとなります。実際の「Vシェイプ」の入り方にはかなりの個体差があります。簡易的には「ハードVシェイプ」と「ソフトVシェイプ」と区別して表現される場合が多いですね!
*58年中期~59年初期製メイプルNeck
58年3月頃のデイティングのネック以降、それまで設定されていた「Vシェイプ」がなくない、通称「Uシェイプ」または「Cシェイプ」と表現される握りに変更されます。
58年は全般的に太過ぎず細過ぎず・・・Player志向の方には人気のあるNeckシェイプです。
*59年製メイプル/59・60年製ローズNeck
59年は皆さんご存知の通りメイプルNeckからスラブ貼りのローズNeckに仕様変更を受ける年となり、実際にはメイプルNeckは4~5月位まで・・・それ以降ローズに移行されたと考えられます。
この年代のネック・シェイプはメイプルNeck・ローズNeckに関わらず薄めで、特に1フレット~5フレット近傍までがかなり薄く、その後12フレットへ向けて徐々に肉付きが増す感じとなります。
*61・62年スラブ・ローズNeck
前述の59・60年製ネックがかなり「薄め」のNeckシェイプに対し、この時期には多少Neckの肉付きが増し、握った時のグリップ感が増しますが「ファットNeck」とは言えないモノが大半を占めます。
但し、ごく稀にかなりガッシリとした太めのシェイプのNeckが存在するのも事実です(但しもの凄く少ないので、見つけた時にゲットしないと次はいつお目に掛かれるか判りませんよ!)
*62年~64年中期製ローズNeck
標準的な仕様としては、前述の61・62年のNeckシェイプに対し、更に若干肉付きが増す感じとなります。
またこの時期には通称「Big Neck」と呼ばれるかなり太めでグリップ感のあるネック・シェイプも僅かながら存在します。但し全体の2~3割り程度と存在数は少なく、また昨今かなり「太めのNeckが人気」という傾向もあり、探されいる方も多いので、実際に出会う確立はかなり低いと思われます。また、そのシェイプ自体のバラツキも大きく、他方「Big
Neck」と呼ぶ判断基準も曖昧なため、ショップ毎の商品説明を100%鵜呑みにするのではなく、やはり実際に直接ショップに足を運んでご自身で判断される事をお勧めします!
*64年後半~65年製ローズNeck
64年9月頃を境にヘッドのロゴが通称「スパッゲティー・ロゴ」から「トランジション・ロゴ」に仕様変更され、65年1月前後で指板のポジション・マークが通称「クレイ・ドット」から「パール・ドット」に変更され、また65年中期には指板のローズの材質が「ハカランダ(ブラジリアン・ローズ)」から「インディアン・ローズ」に変更・・・とFender社がCBSに売却され、様々な仕様変更を受ける時期となります。
この時期の一般的なネック・シェイプは、ほど良くグリップ感のある「C」シェイプで、Lowフレットのグリップ感がそのまま12フレット近傍まで続き、その後多少肉付きが増す・・・という表現が最適だと思います。
特にナット幅の変更はありませんが、それ以前のNeckと持ち替えると、ナット幅を含めて「スリム」になったと感じられる方が多いかも知れません。
*66年製ローズNeck
65年までのNeckに見られた「C」シェイプ特有のグリップ感がなくなり、カマボコ系の「Uシェイプ」に形状が変更されます。
Neckシェイプに関し、エッジ部分近傍の処理が変わったのでしょうか・・・実際にはナット幅を含め変更はありませんが、ネック全体が幅広になったのでは?と錯覚する程ワイド感があり、シェイプ全体はフラット系に成形されまさに典型的な「カマボコ型」だとお考え下さい。
*69年~70年製Neck
67年・68年製に関しましてはストラトキャスター自体の生産本数が極端に少なく、私自身の個人所有及び当店での過去の取扱い本数も少なく、一般論としてコメント出来るレベルではないため割愛させて頂きます。ご了承ください!
(この時期のネック・シェイプは、基本的に66年製に見られる「カマボコ」形状を踏襲していいると考えて間違いないと思いますよ。)
69年よりジミヘンの台頭を契機に「ストラトキャスター人気」が復活し、生産・出荷本数も増えてきます。
但し事ネック・シェイプに関しては、ストラトキャスター全体の歴史の中で一番統一性がなく、バラツキが大きい時期だと考えれおります。過去の56年や63年「Big
Neck」に準ずるの「極太系のシェイプ」のNeckが存在する反面、66年の様な「スリム系Neck」もほぼ同時期に存在します。但し共にナット幅は約42mmの”B”Neckが大多数とその傾向は他の時期と同じ・・・正直訳が判らない!と言いたいのが本音です(笑)
よってこの時期のストラトをお探しの方は、あまり既成概念に捕われず、実際にショップに足を運ばれてご自身の感覚で「好き」・「嫌い」をご判断される事をお勧めします。
但し、68年後半にネックの塗装が従来の「ラッカー塗装」から、「ポリ塗装」に変更され、シェイプとは別次元での実際にネックを握った際の「グリップ感」大きく変わると思います。
*71年製Neck
71年9月デイト・スタンプのNeckより3ボルトNeckの存在は確認出来ていますが、やはり個体数が少な過ぎてコメント出来るレベルには至りませんので、あくまで4ボルトNeckに関して書かせて頂きます。
69年~70年(特に69年)のバラツキが大きかったのに対し、71年製は比較的に安定しており、全般的に「C」と呼べるシェイプですが、決して太くは感じないと思います。
*72年製Neck
全般的にグリップ感のある太めの「Cシェイプ」Neckで、特に初期1ストリング・ガイド仕様の時期は顕著です。その後73年に近くなるに従ってNeckの肉付きが徐々に取れて「細め(薄め)」になっていく傾向にありと思われます。
*73・74年製Neck
まず先に74年製ですが、基本的には薄めの通称「シンNeck」呼ばれる全般的に肉付きのない「ペタン」としたシェイプとなります。
73年に関しては72年から74年への以降期という解釈が正しいと思うのですが、73年前半の場合限りなく72年後半に近い「グリップ感」のあるシェイプとなり、73年後半のモノは逆に限りなく74年仕様に近い「シンNeck」となります。
特に72年前期と74年製では「別物」と思う程Neckのシェイプ、実際に手に取った時のグリップ感が異なります。
それぞれに好き好きだと思いますので、やはり実際にショップに足を運ばれて手に取って判断される事をお勧めします!
*75年・76年製Neck
不思議な事に74年製に顕著に見られるの「シンNeck」は74年の1年間で姿を消します。
75年にはまたネックの肉付きが戻りグリップ感が戻ってきます。といって流石に72年前半の様な「極太」には至らず、感覚的には移行期である73年製で72年後半仕様に近い、「Cシェイプ」を基本にグリップ感が感じられるNeckとなります。
追記 (2014年1月)
ご来店されるお客さまや、お電話にてお問合わせ頂くお客さまの、大多数の方々が「太くてグリップ感のあるビンテージ・ストラトを探しています」とお話されます。その背景には、現在お使いになっているカスタムショップ製なりの現行ストラトが太目のNeckシェイプになっているからだと推測されます。
Neckは弦の振動を伝える重要なパーツで、「Neckのクオリティーがサウンドの7割以上を決定する」と云っても過言ではありません。
昨今の現行品で、ある一定以上のクオリティーを持っているギターは、ストラトに限らずかなりNeckシェイプは太目に作られていると思います。
その最大の要因は、固く締まったNeck材が手に入らない事に由来します。
前述の通り、Neckは弦の振動を伝えます。よってFenderの場合で言えば、固く締まったメイプル材であれば、Neckを細めのシェイプに成型しても、弦の振動はしっかりと伝わります。実際にビンテージ・ストラトの場合では、59・60年製や74年製が特に薄めのNeckシェイプとなり、手で握った感覚でのその好き嫌いは分かれますが、「薄いシェイプで鳴らない」とは決して言われる事はありません。
昨今固く締まったメイプル材の入手が極めて難しくなっているそうです。
よってある一定以上のクオリティーを目指すメーカーのギターは、弦の振動を体積で稼ぐ手法を取り、鳴りの向上を求めた結果、Playして違和感を感じないギリギリの範囲までNeckのシェイプを太くして製作する訳です。
実際のビンテージ・ストラトキャスターに話を戻しましょう。
現行カスタムショップ製ストラトキャスターに見られるグリップ感のあるNeckは、実は殆んど存在しません。
当店にギターを探しに来られるお客さまで、現在カスタムショップ製のストラトキャスターをメインで愛用されているお客さまの9割以上の方が、当社で59~64年頃のローズNeckのストラトを手に取られ「もっと太いNeckの個体はありませんか?」とお尋ねになります。
50sのメイプルNeck期では、55年及び56年の中頃までの時期のNeckは、がっちりとした太目の「C」シェイプとなります。
Pre-CBSのローズNeck期では、62~64年製のごく一部(多分その時期の2~3割程度)に、通称「Big Neck」と呼ばれる太目のシェイプは存在はしますが、その「Big
Neck」と云われるものでも、現行カスタムショップのグリップ感のあるNeckよりは細いかも知れません・・・
ビンテージ・ストラトの場合には、Neckが細くてもまったく問題なく鳴っています!
カスタムショップ製を含めた、現在愛用されているギターと同じでなければダメ・・・これでは出会いの可能性を極端に狭めてしまっています。
場合によっては「新たに出会ったビンテージ・ストラトのNeckに自分の手を合わせる」その位の覚悟を持って「ベスト・パートナー探し」をして頂きたと思いますが如何でしょうか・・・
8)ビンテージ・ストラトキャスターの購入にあたって
これより、本コラムの主旨である「後悔しないビンテージ・ストラトキャスター選び」に関し話を進めていきたいと思います。
初めに絶対に言っておきたいのは「自分の一番好きなストラトを購入する」・・・この一点に尽きます。よって前述したマーケット状況、希少性、サウンド等を理解した上で、「どんなストラトが欲しいのか」。もしくは「どうゆう目的で購入したいのか」を先ずは自問自答してみて下さい。
単に「ビンテージ・ストラト」が欲しい・・・これだけでは選択肢が多すぎます。ふらっと楽器屋さんに立ち寄り、たまたま店頭に飾られていたギターが良い感じで、しかも値段も手頃だったので試奏して衝動買いしてしまった・・・その後、スタジオやライブ等で実際に弾いてみたが「ビンテージ・ストラトとして自分が思っていたイメージと違っていた」・・・この様なお話は日常的に大勢のお客様からお伺いします。
中古楽器の価格ではありませんから、やはり慎重に吟味した上で「これだ!」という1本に絞り込んで購入すれば、少なくとも後日「イメージが違った」という後悔はないと思います。
まずご自身の購入する目的を整理する事をお勧めします。
a>Play志向の方
「ライブやスタジオを中心にガンガンPlayしたい!」とお考えの方は、あくまで「サウンド重視」で多少のパーツ交換、リフィニッシュ、コンバージョンを含め、最初は選択肢を広げ、その上で絞り込む作業を行う事をお勧めします。その際には、ある程度各ショップの在庫状況や販売価格をリサーチし、ご自身なりの「購入予算」を決めておく事は必修条件だと思います。また「サウンド重視」である以上、必ず直接ショップに出向き、ご自身でチェックする事は大前提だと思います。
可能な限り多くのショップを廻り、ご自身の「設定予算内」で、1本でも多くのストラトをトライする事をお勧めします。実際に手に取って音を出すと、その1本毎の「サウンドの個体差」なり「ネックのグリップ感」の違い、「テンション感やバランス感の違い」といった、以前は漠然とイメージしていた事が、実感として掴めて来ると思います。
また、場合によっては現在お持ちのメイン・ギターを持ち込み、弾き比べしてみる事も良いでしょうね!
「サウンド重視」で選ぶ場合の注意点ですが、必ずご自身の「出したい音」「ビンテージ・ストラトに期待する音」の「音像」をある程度イメージしておいてください。
当店の場合でも、仮にスラブ・ネックのストラトに限定しても10数本の選択枝があります。更に試奏の範囲を62年~64年のブラックボビンPU搭載のストラトに広げた場合、その選択肢は30本近くになってしまいます。
当然その約30本近いギターにそれぞれ「個体差」があります。特に同じタイミングで、同じアンプ・セッティングで試した場合、その「固体差」は確実に体感出来ます。その結果選択肢が多過ぎて「自分の好み」を絞り込めなくなってしまう可能性があります。
その際に、ご自身のイメージしている「音像」をハッキリ持っておられる方ですと、「皆それなりに良い音だけど自分の好みはコレ!」と容易に絞り込みが可能になります。
また、当店では「サウンド」中心でビンテージ・ストラトをお探しのお客様に対しては、仮にご来店のお客様が「スラブ・ネックのストラト」がターゲットだった場合にも、「ラウンド・ネックの63年前後のモノ」や「グレイ・ボビンの64~65年製」も併せて試される事をお勧めしています。
実際に大多数の皆さんが、音に関しては本の紹介記事や音源から潜入感が強く、試す前に「自分の好みはこの年代」と決め付けてしまっている方が多い様に思います。
特に「64年~66年製のトランディション・ロゴ、グレイボビンPU搭載」のストラトに関しては、過去から現在まで有名ミュージシャンの愛器として使用された実例が少なく、「ビンテージ・ストラト」が「スモール・ヘッドにスパゲッティー・ロゴ」のイメージが強いこともあり、皆さんが当初イメージされる「ビンテージ・ストラト」にはならず、実際にご来店されて色々な年代のストラトを試された結果「自分のイメージした音に一番近い!」と最終的に65年製を絞り込まれご購入されるお客様が多いのも事実ですよ。
また最初に書かせて頂いた通り「購入予算」設定はビンテージ・ストラトを選ぶ際には非常に重要です。
何本ものギターを試し、弾き比べると、5万円・10万円の価格差で何本ものギターが目の前に現れます。それを片っ端から試した結果、当初100万円前後の予算でギター探しを始めたのに、自身が気に入ったギターの価格は150万円だった・・・なんて事が起こってしまいます。
もちろ気に入ったギターと当初設定予算との差額をクリアー出来れば問題ありませんが、やはり予算の1.5倍というのは、現実的にが無理があると思います。
当店でも、試奏をご希望されるお客さまには、当然でずが「ご購入前提」と云い条件でお受けしている以上、ご購入のご予算や探されているイメージ等をお伺いします。その際に、ご購入のご予算を大幅に逸脱する商品は決してお勧めはしません。
購入した後に後悔しないためにも、ご自身の予算内で可能な限り多くの固体を試す事が重要だと思います。将来仮に「あれ?」と思う瞬間があったとしても、「購入する際に何本もチェックし、その中で一番気に入ったギターを買った!」と考えれば納得出来ると思います。
また自身のアンプを試奏の際に持ち込まれるケースも考えられますが、仮にそのアンプがダンブルに代表される様な「お客様にとっての究極の逸品」であれば問題ありませんが、通常は使用されるギターが変わればアンプの選択も変わるのが必然なので、重い思いをしても持ち込みをされてもあまりメリットはないかも知れません。ましてそのアンプが「スーパー・チャンプ」に代表されるコンパクト・アンプの場合には、試されるギターの「個体差」が発揮出来難いため、「すべて良い音」となってしまう可能性がありますので注意してください。
また私の経験上、一日に多くのギターをチェックすると、頭が混乱し「自身の望んでる音」を見失ってしまうケースが多々あります。その場合には衝動に走らず、一度家に帰りクール・ダウンし、後日再チェックに臨む事をお勧めします。
追記:2019.05.13 リフレットやナットを含むパーツ交換のあるビンテージ・ストラトのご購入に際しての注意点
「ビンテージ・ストラトキャスターのサウンドを楽しみたい」とお考えの「Play指向」の方々には、前述の通りリフレット・ナット交換や、5点SWへの変更等に関しては、当然フル・オリジナルの固体より確実に価格設定が下がり歓迎される傾向にあると思います。
もちろん「Playしそのサウンドを楽しむ」と云う観点でその考え方は正解だと思います。
以下、私が買取りや委託販売を希望される方々が持ち込まれたビンテージ・ストラトを拝見し・査定させて頂く観点で思い付いた事を追記したいと思います。皆さまのご購入を検討される際の参考にして頂ければ幸いです。
<リフレットされたのビンテージ・ストラトでの注意点>
特に69年製以降のNeckがポリ塗装に変更されてからのメイプルNeckのビンテージ・ストラトは、フレットをセット後にNeckを塗装するフェンダーの工程上、リフレットを行う際にかなり費用が掛かるため、既にミディアム・ジャンボフレットにリフレットされている個体をお探しの方が多いと思います。
基本的に「ビンテージ的な価値」としては、リフレットされた個体がオリジナル・コンディションのモノに対し下がってしまうのは当然で、査定金額も販売価格も安めの設定とはなりますが、ビンテージ・ストラトをお探しで当店にご来店され試奏をされずにご購入されるお客様はまず居られない以上、フレットが減り過ぎてチョーキングも出来ないオリジナル・フレットの固体よりも、リフレットされしっかりPlay出来る個体の方が良いに決まっていて、リフレット自体は「致命的なマイナス・ポイント」とは言えません。
(当然レアカラー物やミント物のコレクターズ・ピースの場合、リフレットの有無で数百万の違いが生じるケースがあります。)
その上で注意して頂きたいのが、リフレット作業が行われた際の「指板矯正」の有無です。
一般的にリペア・ショップでリフレット作業を依頼した際には、フレットを抜いた後に指板の汚れや小さな凹凸修正のため、指板表面をサンディングする「指板矯正」と云う工程が1パックとなっています。
ご存知の通り、ビンテージ・ストラトの場合指板にキツメのR設定がされ、良くも悪くも「ビンテージ・ストラト」の特徴の1ツとなっています。
Playを重視した場合、このビンテージ特有の指板R設定は、音詰りやデット・ポイントの要因にもなり、故にフェンダー系のリペアマンからオリジナル・コンポギター製作に移行した、サドウスキー、サー、テイラー等の彼らが製作するギターの指板Rがフラット気味の設定で、更にミディアム・ジャンボフレットが打たれている事に裏付けられます。
また、ビンテージ・ストラトの人気を不動のモノにした立役者、スティーヴィー・レイ・ボーンの愛器の数々は、ジムダンロップ製#6000に準ずるジャンボ・フレットは有名ですが、更には指板のRは落とされ殆どフラットな状態になっていました。
リフレット自体はOKですが、「指板矯正」の有無は必ずチェックして下さいね!
多少の指板矯正自体は大きなマイナスにはなりませんが、見た目でも判るフラット気味に矯正された指板のNeckは完全にアウトですよ!いくら「弾き易かった」とか「安かった」と云う理由でも将来売却しようと考えた時点で、絶対に後悔すると思いますよ~
<パーツ交換されたビンテージ・ストラトのお購入に際しての注意点>
リフレットの際のナット交換や5点SW交換、また消耗パーツのポットやジャックに関しては、当然ですが「ビンテージ的な価値」は間違いなく落ちますが、致命的ではありません。
むしろ「Playする」という観点で、当店入荷時にはオリジナル状態であっても、ジャック等は販売前の調整・セットアップ段階で問題があり、新品パーツに交換後に販売するケースもあります。
パーツ交換の有無に関しては、ビンテージを中心に扱っているショップであれば詳細を把握され、お尋ねになれば間違いなく詳しく教えて貰えると思います。
またフル・オリジナルな個体に対し、パーツ交換がある個体であれば、間違いなく販売価格も安めの設定となっていると思います。
よって交換されたパーツの箇所が気になるか、OKと云うご自身の判断と、その販売価格のバランスと考えて決断されれば良いと思います。
但し、取り敢えずそのギターを購入し、その後時間を掛けて変更された箇所のパーツを探し、オリジナルに戻して行こう・・・とお考えであれば、その個体は購入されない事を強くお勧めします。
理由は、先ずオリジナルのビンテージ・パーツの入手はかなり困難で、仮に販売されていれも想像を遥かに超えた高額設定が当たり前だからです。ギターの販売時には、交換されたパーツの流通価格を大きく下回る販売価格設定となっているのが通常です。
入手困難なパーツの代表格は何といってもポットでしょうか・・・50年代・60年代中頃までのモノであれば、当然新品のN.O.S.パーツではない、ギターから外された中古パーツで1ヶ数万円は当たり前です。それでも仮に探してご自身のストラトに組み込んだ場合でも、他のポットとデイティングの辻褄が合わなければ「オリジナル」と云う市場評価は得られませんので、高い支出が報われません。
(殆どのビンテージ・ストラトパーツにはデイティングの記載がありますので、仮にパーツをお探しになるのであれば、組み込んでOKとなるパーツのデイティングを必ず見極めて下さいね!)
反面、比較的入手可能なパーツはチューナーです。
その年代の他のフェンダー・ギター(テレキャスター、ジャズマスター、ジャガー等)に同じ仕様のチューナーが搭載されていますので、市場への流通量も多く探せば必ず見つかります。
但し、54年~56年中頃までのストラトに採用された通称「Kluson "No Line"」と呼ばれているチューナーは、当時テレキャスターとストラトキャスターしかFenderが作っていなかったため流通量が極端に少ない、セットで10万円は覚悟しないと手に入らないでしょうね・・・
当店の買取り・下取り査定においても、PUのリワインドを含めパーツ変更の有無は詳細にチェックさせて頂きます。
当然PUのリワインドや、ピックガード、トレモロAssyやサドルと言ったオリジナル・パーツ価格の高額なモノの場合、査定金額に大きく反映はされますが、それでも然るべき金額は必ず付きます。
現時点で当店で買取りをお断りする、もしくは極端に査定金額が下がってしまうのは、絶対にパーツで入手出来ない箇所が変更されてるビンテージ・ストラトで具体的には以下の通りとなります。
この部分に合致するビンテージ・ストラトが販売されているケースも多々あるとは思いますが、購入は見送られるのが良いと助言させて頂きます。
1)54年製ストラトキャスター
・PUが1ヵ所でもリワインドの固体
54年の最大の特徴はその面取りされた丸みを帯びたHeadシェイプを含めた外観上の特徴もさることながら、最大のポイントは出力の低い「Shory G」のブラック・ボビンPUだと私は考えています。
一般的なビンテージ・ストラトの場合、私も本コラムで「リワインド」のPUを否定していません。実際に手に取って音を出されOKであれば、リワインドされた分確実に安い価格設定になっている訳ですからある意味「買い」でしょう。
また将来的に気になるのであれば、価格は高くなりますが55年以降の「Shor G」を含めたオリジナルPUは、探せば必ず入手可能だと思います。
反面54年製ストラトに搭載されている「Short G」PUは、55年製の「Short G」とポールピースの高さ設定では同じですが、全くの別物でしかも先ず単品で市場に流通する事はありません。
またこのPUこそが「54年製ストラト・サウンド」を決定する要因に他ならず、よって仮に「Playする54年ストラト」を入手しようとお考えになっても、リワインドPUの搭載された54年製ストラトは、もはや「54年ストラト」ではなく、Player's ピースとしての存在価値もないと考えます。
但しその販売価格が、「54年製ストラト」と云うレベレではなく、55年製以降の2トーン・サンバーストのリワインドPU搭載商品と同レベルであれば、話は別で、手を出しても良いかも知れませんね!
・丸穴バックプレートが欠品している個体
54年製の外観的な特徴として、丸穴のトレモロ・バックプレートの存在が挙げられますが、このオリジナル・パーツも先ず入手する事は不可能だと思います。
「54年製ストラト」の販売価格は、他の年代のサンバースト・ストラトとは別格で、「ストラトキャスター初年度」と云う点以外に、「54年製ストラトしか持っていない外観的な特徴とその独特のサウンド」、更には「700~800本程度しか生産されていない希少性」を持ち合わせ、既に「54年ストラトでストラトは完成している」点に尽きないと考えます。
それ故にビンテージ・ストラトキャスターのファンの方々は、「いつかは54年製ストラトをコレクションに加えたい」と思われるのだと思います。まさに54年製ストラトキャスターは「King Of Stratocaster」だと断言させて頂きます。
そんな「King Of Stratocaster」の購入を考えるビンテージ・ストラトスキャスター・ファンの方が、大きな外観的な特徴である「丸穴トレモロ・バックプレート」が欠品しているストラトの購入を検討されるでしょうか・・・ましてや昨今流通しているリプロのエイジド・パーツが装着されている個体など言語道断だと思います。
仮に当店にその様な固体が持ち込まれた場合には、単純な査定金額でマイナス100万円・・・と言っても過言ではないと思います。
よってその様な個体のご購入は見送られる事をお勧めします。
ビンテージ・ギターのオーナーの方々皆さんが既にお気付きだと思いますが、「他人は騙せても、自分自身は騙せない!」この一言に尽きます。
仮にお持ちの54年製ストラトの丸穴バックプレートが欠品していて、リプロのエイジド・パーツを装着していたとしましょう・・・他の方が見て「リプロ・パネル」だと気付かれる事は先ずないと思いますので、他の方に見せれば「54年製のオリジナル・ストラトを持っているなんて凄いな~」と必ず言われると思いますが、貴方はその褒め言葉を素直に喜べますか?
ピックアップのリワインドに関しても同様です。
普通に54年製ストラトキャスターをアンプを通して音出しされた経験をお持ちの方はかなり少ないと思います。よってリワインドPU搭載の54年製ストラトを人前でPlayされ、「流石54年製ストラトだね~」とその出音を褒められた時に貴方は素直に喜べますか?
2)57年製Mary Kayeストラトキャスター
・オリジナル・スクリューが欠品し、年代ズレのゴールド・スクリューもしくはニッケル・スクリューが装着されている固体
メイプルNeckのブロンド・フィニッシュ、更にゴールド・パーツの通称「マリー・ストラトキャスター」・・・まさにビンテージ・ギター・ファンの究極のコレクターズ・ピースの1本で、私は「Queen Of Stratocaster」だと考えています。
当然ですが価格も現在では青天井となってしまいました。故にコレクターを完璧に満足させられる個体でなければその存在価値は否定され兼ねません。
オリジナル・フレット&ナット、ハンダ・バージンのオリジナル・パーツ・・・これらの仕様は比較的チェックし易く、先ず見落とす事はないと思いますが、特に57年製までの「マリー・ケイ・ストラトキャスター」の場合、ロッド・スクリューを含めたすべてのスクリューのチェックを忘れずに行って下さね!
ネック、ピックガード、トレモロ・バックプレート、ジャックプレート、チューナー・・・すべてのスクリューはもちろんゴールド・メッキであると同様に、木ネジ仕様となっているのを必ず確認して下さい。
ゴールド・メッキの木ネジのパーツ単品など、Strato-Crazy開店以来一度も市場で販売されているのを見た事がありません。当然現行のFender純正パーツを含めたリプロのゴールド・スクリューとはメッキの質が大きく異なります。
海外のコレクターのとって、ピックガードのゴールド・スクリュー1本がオリジナルではない・・・と云う理由で購入を見送る、またはキャンセル・返品するという事は当たり前となっています。
究極の「Queen Of Stratocaster」のマリー・ケイ・ストラトを手に入れられるのであれば、やはり完璧なモノに拘って下さい。
仮に当店に一部オリジナル・スクリューではないマリー・ケイ・ストラトの買取り査定のオファーが来た場合、場合によってはお断りする可能性も否定は出来ないと思いますよ!
「たかがスクリュー、されどスクリュー」・・・凄く重要なことだと思います。
b>夢の1本として大事にしたい!とお考えの方
普段は家で時間のある時に軽く弾き、週末友人達とスタジオでPlayしたり年に数回ライブをする程度・・・でもビンテージ・ストラトは「昔からの憧れ」で究極の1本として是非所有して大事にしたい!そんな思いでビンテージ・ストラトのご購入をご検討の方も多いと思います。また「自分の生まれた年のストラトが欲しい!」とお考えの方も多いですね!その気持ち凄く判りますよ。フェンダーの場合はネック・デイトや、年代によってはボディー・デイトから「生まれた年」+「生まれ月」までコダワル事も可能です(笑)
「一生モノ」として大事にしたい・・・という観点から言っても「サウンド」は大事ですよね。また贅沢を言えばスペック的な「オリジナル度」も高いにこした事はありません。
よって一番大事なのは「購入可能な予算」をある程度当初より絞り込んでギター探しを始めることだと思います。仮に63年生まれの方で購入予算が150万円迄だとすれば、オリジナルのサンバーストはちょっと厳しいかもしれません。よって必然的にリフィニッシュ物がターゲットとなります。その上でより多くのショップの在庫をチェックし、ご自身にベストな63年リフを絞り込めば良いと思います。
またショップを廻ってギター選びを行っている時に、ご予算以上の価格で「コレだ!」というギターに出会った場合には、一度冷静になって自問自答してください!
もし現金一括でのご購入を前提にギター選びをされているのであれば、その準備された現金を頭金にして、残金を月々無理なく支払いが出来る金額でクレジットを組んで手に入れれるのもお勧めです。
逆に一時の衝動に駆られ、無理なクレジットを組まれ結局月々の支払に困り、最終的には手放してしまった・・・というお話もよくお伺いします。
10数年前の私自身、Pre-CBSのオリジナル・カスタムカラーのストラトのみにターゲットを絞って常に探し回っていましたが、その際にも自分で「1本のストラトに出せる予算」はしっかり決めていました。仮に良いストラトが見つかっても予算オーバーだった場合は、すっぱり諦めていましたよ!
c>カスタムカラー狙いの方
私自身は、自分のコレクションに関して、は20数年前から「60年代のカスタムカラーのストラトキャスター」のみに絞って来ております。
その私の経験上「探しているカラーのストラトが売りに出た時は迷わず買え!」と断言させて頂きます。
10年くらい前ですと、65年以降のキャンディー・アップル・レッド、ホワイト、レイク・プラシッド・ブルー等のカラーであれば、都内の専門ショップを廻れば選べましたが、昨今それですら本当に流通しなくなりました。
まして以前でも「レア・カラー」と呼ばれていたカラーのストラトに関しては、当時も見た瞬間に「買うか諦めるか」を即時に決断しないと入手する事は不可能でした・・・その状況は今も変わっていません。
仮に狙っていたカラーのストラトが実際には納得のコンディションでなくても、レア・カラーであれば流通している事自体が奇跡ですから、予算が合えば「まずは入手」すると事をお勧め致します。その後同じカラーで更に良いコンディションのモノを見つけた場合には、その際に手持ちのギターを下取りに出すか、手放すかしてアップグレードされれば良いと思います。
(追記:2013年9月)
特にオリジナル・カスタムカラー物のストラトをお探しの方は、ショップ選びも慎重に行って頂きたいと思います。
私自身、ビンテージ・ストラトキャスターで、特にカスタムカラー物をプライベートでもコレクションしている関係で、カスタムカラー物のストラトキャスターには日頃から厳しいチェック姿勢で臨んでいます。
ご存じの通り、基本のサンバースト物に対し、Bodyカラーが異なるだけで2~10数倍に価格が変わってしまうのがカスタムカラー・ストラトキャスターの世界です。故に私はお客さまに「100%問題なし!」と断言出来る商品しか販売出来ないと常日頃より考えております。
30数年間に渡り、カスタムカラー物のストラトキャスターを見続けて来た間に、多くの「?」と思える個体を目にして来ました。また2002年12月にStrato-Crazy開店後も、多くの疑問を感じるカスタムカラー・ストラトキャスターに出会い、買取りや委託販売でのお取り扱いを何回もご辞退させて頂いております」。
その後、当店にての扱いをご辞退させて頂いた同じギターが、他店さんでオリジナル・カスタムカラー・ストラトキャスターとして販売されたり、当店にてリフィニッシュ物として販売した商品が、数年後他店さんでオリジナル・カスタムカラーとして販売されたり・・・という事を幾度となく目にして来ました。
当然ですが私の「?」の判断が絶対ではなく、場合によっては私がカスタムカラー物に対して厳しく評価し過ぎているのかも知れません。
私の場合、ことオリジナル・カスタムカラー・ストラトキャスターに関しては、海外からの調達の場合でも、少しでも疑問を感じた時点で必ず返品します。要は「100%オリジナル・カスタムカラーと断言出来るモノしか扱わない」このポリシーを貫いています。
当然他店さんでも、入荷時に十分に検品をされた結果を持って、自信を持って商品を販売されているでしょうし、当然購入されたお客さまに対しても、オリジナル・カスタムカラーである事を保証されているので、販売されたショップと購入されたオーナーさん共々に何ら問題はないと思います。
仮に現在お持ちのオリジナル・カスタムカラーのストラトキャスターを、当店に下取り・買取り・委託販売をご依頼され、検品の結果当店でのお取扱いをご辞退させて頂いたギターであっても、ご購入されたショップにご相談されれば、何ら問題のないオリジナル・カスタムカラーとしての評価を受けれるので、ご心配はご無用だと思います。
また、実際に購入されるお客さま側からすれば、数10年前の完璧なリフィニッシュ物と、オリジナル・カスタムカラー物の識別すら困難なのが事実で、オリジナルか否かを含め、そのすべてをショップを信用して購入するは当然だと思います。また当然そのスタンスで良いと思います。
但し、オリジナル・カスタムカラーのストラトキャスターは、皆さんが想像する以上に世界マーケットで高額で、しかも市場に流通する量は昨今極端に減少傾向にあり、滅多にお目に掛れなくなって来ています。
安易に「安いから」とか「レアだから」と云って出物に飛びつくのではなく、カスタムカラー物のストラトキャスターに限っては、ショップの選択をを含め、「石橋を叩いて渡る」くらいの慎重さでご購入を検討される事を、老婆心ながらご忠告させて頂きます。
当然ですが、オリジナル・カスタムカラーのストラトキャスターに関しては、その識別・鑑定共に相当の経験とスキルが必要ですし、販売価格も前述の通りかなりの高額な商品となります。また、万が一将来手放す事をになり、ショップにギターを持ち込んで正当な評価が受けられなかった際に、しっかり保証して貰えるか否かの信用が大前提だと思います。よって何の保証も得られないオークションを含めた個人売買だけには、絶対手を出さない様にご忠告申し上げます!
d>コレクターの方
日本で「コレクター」という響きは「オタク」や「ネクラ」的な響きが含まれ誤解を受けがちですが、「好きな物を集める」行為は自然の欲求であり少なくとも恥じるべき行為ではありません。「ビンテージ・ギターのコレクター」は日本ではまだ少数ですが、欧米では多数おられ、幅広くギターを集める・・・よいうより、かなり絞り込んだテーマを持って集められる方々が多いですね。
私自身、商売で扱わせて頂いているストラト以外に、ビンテージ・ストラトのPlayを楽しむ反面、ストラトキャスターで59~66年のローズNeckのカラー・チャート上に紹介されているカスタムカラーをコレクションしております。ディーラーやコレクターからオファーを貰い、資金的に余裕があるタイミングが重なった時には、自身のコレクションとして今でも購入しています。(昨今はカスタムカラーのストラト価格が高騰し、簡単には手が出せないのが事実ですが・・・)
コレクションとして所有される以上、やはり「オリジナル度」と「コンディション」には絶対にこだわって下さい!
昨今の海外のコレクターの場合、「弾く」という次元ではなく、「フル・オリジナルの当時のままの状態」に異常な執着を持っています。
具体的なお話として、「フル・オリジナルのミント状態のストラトで長年保管されている間にブリッジPUが断線し音が出ない」といギターと、「ミント状態で完璧なストラト、でもPUセレクターが5点SWに交換されている」ギターがあった場合、皆さんはどちらを購入されますか?
一般的に考えると「PUの音が出ない」という現状はギターとして機能していない観点より「難有り」と判断し、後者を選択するのが普通だと思います。しかし昨今の欧米のコレクターの方々は、実際に9割以上の確立で前者を選択します。
彼らにとってはコレクションを「弾く」という観点で購入する訳ではないため、「素晴しいコンディションの物が、まったく手付かずの当時のままの状態で残っている」事の方が重要な事なんですね!よって海外のコレクターの方々からオファーを貰う時は必ず「ハンダはバージンか?」と質問されますし、「各部位のハンダの状態が確認出来る画像が欲しい」とのリクエストを受けます。
私自身もプライベート・コレクションに関しては、ここ数年はフルオリジナルの二ア・ミント以上の物しか購入していません。
もちろん、その分価格も通常コンディションの2倍以上とはなってしまいますが、購入後の所有している喜びも数倍です!
余談ですが、たくさんの本数を所有する事が「コレクション」ではなく、少数でも極上モノを所有する事が「真のコレクター」だと私は常日頃から思っております。
9)ビンテージ・ストラトキャスターの購入方法
「ショップ」で購入されるか、オークションを含めた「個人売買」で入手されるかに大別出来ると思います。後者の「個人売買」に関しては、基本的には「自己責任」が大前提となります。中古楽器であれば問題はないでしょうが、高額なビンテージ・ギターを入手される手段としては正直お勧めは出来ません。
友人等の所有ギターを直接確認し納得した上で購入されるのであれば問題はないでしょうが、よくオークションで見られる「ノークレーム、ノーリターン」で現品の確認もせず、デジカメの画像と簡単な説明のみでビンテージを買われてしまうのは如何なものでしょうか・・・まして実際の試奏もしないので、重要な要因の「サウンド」の確認も出来ない状況ですよね!
私自身ももちろん「個人売買」はかなり利用した経験がありますし、現在も海外のコレクター、個人ディーラーやPlayerの方々から、日々商品や自身のコレクションを購入しております。その際には現品を確認して気に入らなければ返品&100%の返金が可能なディールに限定し、尚且つ詐欺を含めたリスク回避対応を完璧にした上で取引を行っております。
買われる方がそれなりのビンテージに関する知識と鑑定眼力をお持ちの場合で、売主の方がビンテージにあまり詳しくなく誤って「オリジナル」と言ってしまう場合や、フル・オリジナルと説明を受けてショップから購入し、その後も確認せずに信じておられる方場合に関しては悪意がないので、現品をお互いに確認しながら取引をされればある程度のリスク回避は可能でしょう。
但し、昨今はビンテージ・ギターが高額になったため、悪意をもって「フェイク物」を「オリジナル・ビンテージ」と称して販売したり、「良く出来たリフィニッシュ物」を「オリジナル・フィニッシュ」と称して販売するケースも多々存在します。この様な詐欺まがいケースの場合には、私自身が通常購入検品時に確認する項目(治具痕等)はすべてクリアーしてしまう確信犯が多いので、十分に気を付けて下さい!
お恥ずかしいですが過去の失敗経験や実際にお客様のご経験を数点実例として挙げさせて頂きますので、ご参考にして下さい。
*海外オークションにて購入の失敗経験
Pre-CBSのカスタムカラー・ストラトのコレクションを始めて以来の私の夢は「オリジナル・ブラック」のスラブNeckモノを入手する事でした。
国内のショップや海外ショップ&ディーラー等の在庫を頻繁にチェックしても、62年製のラウンドNeckの「オリジナル・ブラック」は見つかってもスラブNeckモノは皆無でした。
90年代後半だったでしょうか・・・そんな折に海外オークションで60年製(だったと思います)のブラックの出品を発見しました。説明によると「オリジナル・オーナーから直接買った」とあり、オリジナル・オーナーが実際に演奏している白黒の古い写真も画像としてアップされていました。
詳細のスペック説明やアップされている画像を確認しても疑問の余地がなく、早々に出品者にコンタクトを取り更に細かい箇所の質問や追加画像のリクエストを出しました。そのリクエストに対するレスポンスも良好で、その時点で「詐欺」等ではなく確実にギターを出品者が所有している事の確認も取れました。
そこで最終確認として「返品&返金」ポリシーを問い合わせた所、「商品が届いて確認して貰い、問題があれば返品・返金を受け付ける!」との確約も取れたので、当時の個人売買としてはかなりの高額となりましたが、「夢のギター・ゲット」と張り切って入札し、オークションで勝利しゲットしました。早々に海外送金をし、約1週間後にギターも無事に届きました。
ここまでは取引もスムーズで、何も問題はなかったのですが、届いたギターを検品すると、かなり古いフィニッシュで、塗装のクラックや傷を含め画像上では問題なく見えたギターですが、とても「オリジナル・フィニッシュ」とは呼べない代物でした。
早々に「リフィニッシュ」の旨連絡を取り返品&返金を申し出ましたが、売主は「オリジナル・オーナーから買ったから間違いない!写真が証拠だ!」との主張で返品を拒絶されました。(余談ですが、古いオーナーの写真は一つのドキュメントとしては有力ですが、そのオーナー自身が購入後リフィニッシュを施しPlayしたとも考えられ、オリジナル・フィニッシュの証拠にはなりません。反面購入当時のレシートが保管され、その中にカラーやシリアル・ナンバーが明記された、現品のギターとマッティング物する場合にはかなり有力な証拠になり得ます。)
その後数週間掛け、当時私が所有している同年代のカスタムカラーのストラトと、購入したストラトの細部の画像を撮って比較し「ここの箇所がおかしい!」とコメントを付けて送る行為を繰り返し、本人もやっと「リフィニッシュの疑いがある」と納得してはくれたのですが、その後は音信不通になってしまいました。
メールを送っても返事は来ず、電話をしても留守番電話・・・約1ケ月辛抱強く電話を掛け続けても本人とコンタクトが取れない状態が続きました。結局アメリカ人の友人に相談し、彼の友達の弁護士を雇い解決を依頼する事となりました。
弁護士の話では、直接彼を捕まえ「損害賠償を含め告訴する」旨を伝えたところ、「返品&返金には応じるが送金されたお金は既に使ってしまい、返したくても返せない」という事情があった様でした。その後の交渉を含めすべて弁護士の方にお任せし、約半年後に返金はありましたが、結局かなりの額の弁護士費用と友人への謝礼を払い、手元には残った金額は実際に支払った半分程度だったと記憶しています・・・実際にはかなり目減りはしても、お金が戻ったのはラッキーでしたが、費用・時間・精神的ストレスを考えると、二度とこんな経験はしたくはありません!
*個人ディーラーから購入の失敗談
海外(特にアメリカや欧州)の場合、実際の店舗を構えずインターネットや雑誌広告+通信販売にて商売をしている「ディーラー」と呼ばれる方々が多数存在します。彼らはの大多数は「プロフェッショナル」ですので通常ショップを構えている方々と差異はありません。但し「ショップ」を構えていない以上、実際の取引に関しては「個人売買」と同様のリスクが伴う可能性があります。(大多数の著名なディーラーは問題ありませんが、中には少数ですがかなり「ヤバイ輩」が存在しますので要注意です)
以前、ギター・ショー等でたまに見かけ、立ち話をする程度の仲のディーラーから「54年のストラトを買わないか?」とのオファーを貰いました。ギター自体は画像を見る限り問題なかったので、早々にディールをまとめ代金を海外送金し、約1週間後に無事ギターも届きました。
早々にチェックするとボディーはクリアー塗装のオーバー・ラッカー物で、PUは2ケリワインド・・・これでは商品になりません。当時は既に過去の痛い経験から、「ギター到着後2日以内に連絡すれば、如何なる理由であれ返品&返金に応じる」というのをディールの最低条件を設定し、当然ディール前に売り主からの同意も取り付けていました。
よって細かい事を説明してトラブルを大きくしたくなかったので、「画像では気に入っていたんだが、現品は画像とちょっとイメージが違うので、今回は返品するよ。すまん!」と連絡をとり、彼も「OK!残念だけど仕方がないね・・・早々にギターを送り返してくれ。ギターを受領して発送時と同じ状態と確認できたら、直ぐに返金するよ!」との回答を貰い、翌日返品をしました。
ここまでは何の問題もなくスムーズでした!
しかしギターを返品発送したその後は音信不通です・・・返品したギター自体は発送時のトラッキング・ナンバーから追いかけて、間違いなく発送先に戻り、受領もされているのですが、メールを送っても返事なし、自宅と携帯電話も留守電かコールのみで通じません。
その後1ケ月程辛抱強くコンタクトを取っていた矢先、私が返品したギターが海外オークションに出品されているのに気が付きました。早々に出品者にコンタクトを取ると、オークションの出品者は連絡の取れなくなったそのディーラー本人でした。
彼曰く「KEYからの送金は別の支払があって既に使ってしまった。それで返品されたギターを他のディーラー仲間に売ってお金を作ろうとしたが思う様に売れず、今回オークションに出品した。落札されればお金が入るからKEYに直ちに返金する」との事で、オークション終了を見守りました。
そのオークションは無事に落札されて終了したのですが、オークション終了後連絡も返金もなしです・・・再三電話をしても「待ってくれ!」の一点張りで進展はありません。その後の再三の催促の結果は「分割払いで返金する」との申し出があり仕方がなく了解しても、入金されたのは1回目の数千ドルのみ・・・
その後連絡はつくものの「待ってくれ」の一点張りで状況は変わりませんでした。仕方がないので、以前のトラブルの際にお世話になった弁護士にお願いし、「ギター代金+損害賠償請求」の意向を伝え、最後はお金ではなく当時彼が所有していたギター数本の物納となってしまいました。
それでも代金相当分に多少満たないまでも、ギターとして回収が出来たのはラッキーでした。
前述の海外オークションでのブラックのストラトの場合には、最悪の事態でも手元にリフィニッシュのギターは残りましたが、このケースで最悪な場合、ギターもお金もすべて失い何も残らなかったという事態になる可能性がありました。その事を考えると今でも正直ゾッとします。
以上簡単に書きましたが、届いた商品を返品発送してから、物納のギターが手元に届くまでに1年半程掛りました。その間ずっと嫌な想いをしっ放しでした・・・そんなの普通は耐えられませんよ!皆さん十分に気を付けてくださいね!
こんな嫌な経験を繰り返したくないので、今の私は個人・ディーラーに関わらず初めてのディールの場合には、送料着払いでまずギターを発送して貰い、受領・検品後に代金を支払う条件を出し、OKをしてくれたディールに限定して行う事でリスク回避をしています。つまり決して「ペイ・ファースト」はやらない事にしています。
ここでは以下「ショップでの購入」を前提に、更に詳しく話を進めて行きたいと思います。
「ショップ」に限定した場合でも、国内のショップか海外のショップか、直接ショップに出向いて現品を確認して購入するのか通信販売を利用されるのか・・・具体的な方法は多岐に渡ります。
追記 (2014年1月)
個人ディーラーの中には、他のショップやディーラーの持っているギターの情報だけで商売を回している輩も数多く居ます。
その類の輩は、かなりビンテージ・ギターの精通した者が多く、仮に商談を進めても投げ掛けた質問や追加の情報や画像要求にも的確に対応して来ます。
よって取引を進める事に問題はありませんが、一番の問題は、オファーを受け相談を進めている時点では、彼らはそのギターを手元に持っていない事です。
彼らは、購入前提で送金したお金を手に入れて、初めてそのギターを持っている他のショップやディーラーにその商品を買いに行く訳です・・・故に僅かなタイム・ラグでそのギターが売れてしまったり、オーナーの気変わりで手に入らなくなったりするケースが多々あります。
この場合、彼らの方から事情を説明し、ディールをキャンセルして代金を返金するのが普通ですが、この手の輩は「自転車操業」で資金を回しているケースが多く、一度トラブルが発生すると、返金したくてもそのお金は他の商品の仕入れに回してしまった・・・と云うケースに発展してしまいます。
最終的には数カ月後には支払った代金は回収は出来ますが、その間のストレスは半端ではありません。
皆さんの場合には、ネット等でHPや楽器専門サイトを通じて商品を検索し、オファーする方法を取られるので先ず問題はないと思いますが、仮に先方からオファーの打診が来た場合には、実際にそのギターをオファーした人間が所有しているのか否かは、十分に事前に確認を取られる事をお勧めします!
海外コレクターとのディール
より良いモノ(コンディションの良いモノ、レアなモノ)を探そうとすると、一般にネット等で検索可能なショップ等では先ず見つかりません。よって世界中のギター・コレクターと連絡を取り合い、相談する機会も必然的に増えて来ます。一般的にはアメリカ在住の方とのディールが主流とはなりますが、もちろんヨーロッパ各地、近年ではアジア各地と、その地域もかなり増えて来ました。
コレクターと一言で表現しても、その実態は「ギター好き」という事で、コレクションしている人間と、ギターの売買を楽しんでいる人間が存在します。前者の「ギターを集めている」人間は、よっぽどの事情がないと自身のコレクションを手放す事はありませんが、後者の「売買を楽しいでいる」人間は、価格さえ合えば比較的容易にそのコレクションを手放してくれます。
では、その「コレクター」と「個人ディーラー」は何処が違うのでしょうか・・・当初は私もそれ程の違いはないと考えていました。しかし双方の人種と長く付き合っていると、まったくスタンスが異なる事に気が付きます。
何回も書いて来ましたが「個人ディーラー」に関しては、実店舗を持たないという信用面でのリスクはありますが、ビンテージ・ギターに関する経験や知識は素晴らしく、その鑑定眼も信頼に足ります。
反面「コレクター」に関しては、すべての人間が然るべき経験や知識、鑑定眼を持っているかは甚だ疑問に感じるケースが多々あります。
私の場合、海外ディールに於いては、「ショップ」「個人ディーラー」「コレクター」何れの場合でも、ギターが手元に届き、検品の結果気に入らない場合にはその理由の如何に関わらずキャンセル&返品OKの確約が取れないディールは決して行いません。
実際には、ディールを行う前に相当数のやり取りを行い、ディテールの詳細や商品の詳細画像を入手してから実行しますので、キャンセル・返品というトラブルは殆んど発生しませんが、それでも数多くのディールを行えば、年に数回は返品・・・という個体も出て来ます。残念ながらそのすべてが「コレクター」からの購入品というのが事実です。
パーツ交換等であれば、コレクター自身も購入の際に気が付くので、キャンセル・返品に至るケースのはなりませんが、返品する場合の大多数が「フェイク物」だと云う点あります。
そのコレクターの方が、購入したショップを信じてコレクションに加えていた・・・結果的にはショップに騙された事に気が付かず、本モノだと信じて持っていた・・・という事になります。
実際、近年はかなりの「フェイク物」が市場に出回っていますので注意が必要です。
また、コレクターに対し「貴方のギターはフェイク物だったよ!」とは決して言えません。(言ってしまえば、彼らのプライドを傷付けてしまい、返品出来るモノも意地になって返品出来なくなってしまいます・・・)
個人の「コレクター」とディールする際には、ペイ・ファーストを避ける事や、キャンセル&返品の条件を事前にしっかり取り決める等の十分な対策を講じる事をお勧めします。
<国内ショップにて購入の場合>
ショップに出向けば、実際のギターを確認出来て音もチェック出来ます。また疑問点が生じても言葉の問題もなく納得出来るまで質問出来ますし、アフターサービスも受けられます。
また、現在所有しているギターの下取りやショッピング・クレジットも利用出来ます。
よってかなりビンテージ・ストラト所有のご経験があり、鑑定眼をお持ちの方か、余程のレア・スペックのストラトをお探しの方以外は、基本的には国内のビンテージ・ギターを中心に品揃いをされているショップでご購入される事をお勧めします。
ある程度ビンテージ・ギターを扱われている専門ショップであれば、販売前に十分な検品・調整が施されていると思いますので、まず安心されて良いと思います。
その上で、以下の項目を念頭にご自身で実際に出向いて判断されれば良いと思います。
ビンテージ・ギターに限らず、ある金額以上の高額なギターをご購入されるのであれば、実際にショップに出向き現品を確認し、ご自身でチェックされた上でご購入される事が前提だと思います。
またご自身はビンテージ・ギターの経験もなく、正しい選択が出来るかあまり自信がない・・・という方は、ビンテージ・ギターを既にお持ちのお友達等に同行をお願いして、アドヴァイスを受けれるのも良いと思います。(但し最終決定はご自身で行うことはお忘れない様に!)
では国内ショップで購入する際の「後悔しないギター選び」のポイントを思い付くまま以下に書きますのでご参考にしてください。
国内ショップにての試奏に関しての注意事項
当店でも「以前よりずっとビンテージ・ストラトキャスターには興味があり、”サウンドが現行品のストラトとは全然違う”という話を聞いて、自身で試してみたい」とか、「近い将来購入を考えているので試したい」と言って試奏をご希望されるお客さまが居られます。
私自身、以前より「試奏はご購入する商品の最終確認の行為」との考えを持っていますので、「ご購入前提」以外のお客さまの場合、お断りさせて頂いております。
要は当社HP、雑誌広告、デジマート等にて当社在庫商品の何れかのギターに興味を持って頂き、ご自身のイメージ・ご予算にも合うので直接来店して店頭での現品を確認し、出音が気に入れば購入する・・・そんなイメージだとお考えください。
厳しい様ですが、「音やPlayフーリングを確かめたい」という動機での試奏はお断りしております。
多分当店に限らず、ビンテージ・ギターを中心に扱われているショップは、同じ様なスタンスではないかと思われます。
ここで「購入前提」とはどの様な状況の事を云うのでしょうか・・・私の解釈は以下の通りです。
基本的にご自身のターゲットなりご予算が明確になっていて、そのご予算の既に準備出来ていて、現在は購入するべき1本を絞り込んでいる過程の状況にあるお客さまの、サウンドやPlayフィーリングの確認行為と考えています。
よって、試したギターが気に入れば、試奏修了後は、HOLDのお手続きを取って頂くか、具体的なご商談となる事が前提と考えています。
もちろん「ご自身にとってのベストな1本」の選択肢を可能な限り増やしたいとのお考えで、他店さんにある在庫も試したい・・・とお考えになるのは当然なので、その様なお考えをお持ちの方は、正直にその旨をお話される事をお勧めします。
また、多くの個体を弾き比べ、その中からの1本を選択する手法は、「後悔しないビンテージ・ストラトキャスター選び」の本コラムとしてお勧めしている購入方法となります。
その際には、試奏を始める前にその旨をショップ・スタッフにお話され、ご予算・ご自身のイメージしているビンテージ・ストラトキャスターの理想等を伝えた上で、ショップ側に「ギター選びを手伝ってもらう」というスタンスで臨まれるのが理想だと思います。
たまに「弾いて気に入れば買います!」とお話されて試奏をされ、試奏終了後に逃げ帰る様のショップ後にされるお客さまが居られます。
その様な行為はお互いに気持の良いものではないと思います。
また、「気に入った1本があれば今日買うつもりできました!」とお話され、数時間掛けて20本前後のストラトの試され、挙句に「他店にも気になる個体があるので、それも試して決めたい」とお話されたお客様が居られました。さすがにその時は私も切れて「もう来ないでください!」とお話させて頂きました。
私は、すべてにおいてコミュニケーションが大切だと思っています。お客さまが試奏を希望される商品に対し、事前に色々とご質問されたり、同じくイメージされているビンテージ・ストラトなり、探されているビンテージ・ストラトのご予算なりがショップ・スタッフに伝われば、当然「気に入って頂ければ、ご購入頂ける!」という事はショップ・スタッフにも十分に伝わり、「音出してみますか?」と云う展開になると思いますよ!
また試奏は個人練習ではありません。ギターの持つ「個体差」を確認して「好き」・「嫌い」を判断する行為であれば、5~10分もPlayすれば十分に理解出来ると思います。当店でも20分前後はご自由にお試し頂きますが、それ以上の時には必ずお声を掛けさせて頂いております。
A>好きなアンプでデカイ音で鳴らしてください!
エレキ・ギターである以上、ギター+アンプがそのサウンドとなります。よってご自身のイメージする音に近い試奏アンプの選択がまずはポイントとなります。
クリーン系のサウンド志向であればフェンダー系、オーバードライブ系であればマーシャル系等、ショップの方にリクエストして納得のいくアンプをチョイスしてください!
また、アンプではクリーンなセッティングをし、歪みはエフェクターを使用される方は、普段お使いのエフェクターを持参されるのも良いと思います。(但し、真っ先にエフェクターを通した音で試すのではなく、先ずはアンプ直のサウンドで第一段階の自己評価をして下さい)
実際に家ではヘッドフォン・アンプやミニ・アンプでしか音を出す環境にない・・・という方でも、チェックする際には「それなり」のアンプで、大きな音を出して思い切り弾いて下さい。
小さな音量では、ギターが持つ個体差や個性を感じ取る事は出来ないと思います。また小さなアンプで試すと、音自体がナチュラル・ドライブしてしまい、すべての音が良く聞こえてしまいますので注意して下さいね!
B>必ず複数のギターを試してください!
何回も書かせて頂きましたが、ビンテージ・ストラトの個体差は、皆さんが想像する以上にあるのが事実です。お目当てのストラト1本のみを試すのではなく、必ずお目当てのギターの年代に近い別の固体を比較する意味でもチェックして下さい!
同じアンプのセッティングで弾き比べると、必ず「個体差」は体感出来ると思います。その上で、ご自身の判断で「好き・嫌い」のジャッジを行えば、後に後悔はないと思います。
仮にそのショップにストラトが1本しか在庫がなく弾き比べが出来ない場合には、仮に出音が気に入った場合でも、その場でその1本を即断するのではなく、まずはKeepの意味で仮押さえをした上で、他店にも足をのばし、弾き比べを行う事をお勧めします。
(但しその場合には、アンプを含めた試奏環境そのものが変化する点はかならず考慮してくださいね!)
決して安い買い物ではありません。購入の際に「自分はその時点で何本かのストラトを弾き比べベストと思うモノを選んだ」と思えれば、後日後悔する事はないと思いますよ!
C>十分な商品説明を受けて納得してください!
実際に試す前後で、ショップの方からそのギターの変更点等の商品説明を聞いて下さい。また素朴な質問等があればバンバン聞くのが良いと思います。(聞くのは一時の恥、聞かぬは一生の恥・・・と言うではないですか!)
但し、「頭デッカチ」のお客さんは、やはりどのショップでも嫌われてします。説明を受けた内容が、事前に本等で得た知識と異なっていた場合には、質問をして疑問点をクリアーにすれば良いと思います。
逆に「本の知識」がすべてではありません。「こうでなければイケナイ!」と決め付ける事は避け、質問を繰り返し最終的に納得できるか否かをご自身で判断されれば良いと思います。
何につけても「聞き上手」な方が良い買い物を出来ると思いますよ。
ギターのコンディションやリフレットの有無等は、外観上である程度判断は可能ですが、パーツの交換の有無、ピックアップのリワインドを含めた状態、Bodyのザグリ加工等の有無に関しては外観上での判別は困難ですので、必ずショップの方から説明を受けて下さい。
また実際に購入を検討する最終段階では、ネックのデイトやボディーのザグリの有無、パーツの状態を確認する意味で、内部の詳細画像を必ずショップの方に見せてもらい、ご自身で確認する事をお勧めします。
仮にショップのスタッフに依頼しても、その時点で画像等の準備がない場合には、最終的に購入する時点にてショップの方にお願いして、必ず中を開けて見せて貰って、ご自身で最終確認を行って下さい。
但し購入検討の段階でショップの方に「中を見せて?」をお願いしても100%断られると思います。ストラトの場合、ネックをボディーから外した時点で、それまでのセッティングは意味を持たなくなり、再度やり直す必要があります。また何回もスクリューの開け閉めを繰り返せば、BodyやNeckのネジ穴が広がってしまう結果を招きます。よって購入が決定した時点での「最終確認」の意味合いでリクエストするのが正解です。
通常その時点になって「駄目」と断るうショップはまずないと思いますし、仮にそれでも断られた場合には後々の事を考えると、そのショップはパスした方が良いかもしれません。
今ではBodyのザグリ加工痕等があるギターを、何も言わずに販売してしまうショップはないと思いますが、実際に当店に委託・買取り査定で持ち込まれたギターで、検品で中を開けた際にザグリ加工があり、ご本人にその旨お話すると、「購入時にはそんな説明は受けていない!」とショックを受けられるおっしゃお客様が稀におられます。
決して安い買い物ではありませんので、すべての面で納得されてご購入をご決断される事をお勧めします。
D>ギターの仕様と設定価格は納得出来るか自問自答してください!
当店の場合もそうですが、扱っているビンテージ・ストラトのすべてが「フル・オリジナル」ではありません。「ビンテージ・ギター」である以前に長年使用された「中古楽器」である事は忘れないで下さい。当然現在までの間に数々のオーナーを経た過程で、ボディーやネックの傷だったり、フレットの打ち直しやパーツ交換等の手が加わっているギターのその大多数を占めます。
各ショップの方々は、その詳細を検品・チェックした上で市場価格と照らし合わせて上で販売価格の設定をする事になります。
すなわち前述のC>でショップの方から、商品説明を受けられた内容を反映した結果が、そのギターの販売価格となる訳です。
弾かれていく過程で消耗してしまうフレットやポット類、以前のオーナーが完全なPlayerの方だった場合にはチューナーやブリッジ・サドル、5点SW等のパーツ交換がされている場合もあるでしょう・・・オリジナルに対して変わってしまった部分やコンディションの大きい・小さいの度合いにより設定価格は変動する訳です。当然変更箇所が多くなれば価格も安くなり、俗に言う「お買い得商品」となります。
但しコンディションやパーツ変更・改造箇所に対する販売価格への影響度合いは各ショップによってかなり異なっているのが実情です。ショップの方に説明を受けた上で、その価格が購入を検討している皆さんに魅力的なのか高く感じるか・・・これは購入を検討される皆さんのご判断次第だと思います。
先ず大切な事は、手が加わった部分に対しご自身で納得出来るかを自問自答されて下さい。
またビンテージ・ギターのオリジナル・パーツやケースは、ストラトキャスターに限らず、市場の流通量は極端に少なくかなり高額になります。物によっては殆ど入手不可能な場合もある事を念頭に入れておいて下さい。
購入される時点で説明を受けた変更箇所を、購入後ご自身で少しずつパーツを探してオリジナルに戻す・・・という行為は結果的に「高い買い物」になってしまいます。変更点に対する販売価格への反映具合が、そのパーツの市場流通価格と同じ・・・という事は絶対にあり得ません。よって後に変更されたパーツをオリジナル・パーツに戻す可能性があるのであれば、購入時点でその変更箇所が気になるギターは避けて、納得出来る仕様の物を購入すれば良い訳です。
また付属品のギター・ケース、トレモロアームやトレモロのバックプレート(裏蓋)は、市場流通段階で年代ズレや欠品してしまう事が多々あります。逆に購入される皆さんからすれば、ケースやアーム、バックプレート等にもオリジナル度を求めたいのではないでしょうか・・・との点へのコダワリのある方は購入される時点でオリジナルが付属している商品を必ずお買い求め下さい。
当店でもケース、アーム、バックプレート等が多少余分に在庫がある場合には一部販売対象とはしていますが、その価格はかなり高額になってしまいますよ!
仮に「自分はPlayer志向だから多少のパーツ交換はOK、但しPUはオリジナルでなければ嫌!」とお考えの方が、ショップでリワインドされたPUが搭載されたギターを実際にチェックしたとしましょう。当初のお考えでは「リワインドPUはNG」でしたが、実際に弾いてみて問題がなく、確認の意味でショップに在庫である同年代のオリジナルPU搭載商品との弾き比べをしてもその差異は気にならなかった・・・とご自身で納得が出来れば、PUがリワインドされている部分は確実に販売価格に反映されている訳ですから、後々も後悔は残らないと思います。
反面、変更点が多いギターを価格の安さに惹かれてしまい、「これなら買える!」と勢いで購入を決断されてしまった場合には、購入された当初は「ビンテージ・ストラトを手に入れた!」という喜びが勝り気にはならないでしょうが、時間が経つにつれて変更箇所が気になりだし、最後は手放してしまった・・・という失敗をされる方が多数おられるは事実です。
E>ショップの保証体制を確認してください!
ビンテージ・ギターに限らず、ギターに関してはある程度の「使用」を前提に入手される訳ですから、購入されて完結ではなく、購入された時点からギターとの長い付き合いが始まる事になります。昨今の日本車の様に「メンテ・フリー」なギターなど存在しません。オーナーな方々の、日頃からのちょっとした気配りやメンテが最も重要ですが、やはり何か不具合が生じた際に駆け込めるショップであるか否か・・・この部分に関しては必ず確認される事をお勧めします。
「購入後のメンテナンスを含めたアフター・サービスはどうなっているのか?」・「保証期間はいつまでか?」・「保証の範囲は?」・「何処までが保証対象でその費用は有償か無償か?」等を必ず確認されてください。
ご自身で既に頼れるリペア・ショップやリペア等をお願い出来る方との関係がある場合にはそれ程問題ではありませんが、納得して購入したギターと長く付き合っていく上で、購入したお店が将来的に頼れるショップか否かは大切な判断材料の一つだと思います。
また将来的にリフレット等を依頼される際にも、「ビンテージの価値を著しく低下させない対応を提案して貰えるか」・・・PUを含めたオリジナル・パーツの機能が損傷した場合、「オリジナル・パーツを使用してのリペア対応が可能か」等は5年・10年と長く1本のギターと付き合っていく場合には考慮すべき点だと思います。
F>クレジットをご利用される場合には、クレジット手数料(金利)を含めた支払合計金額を確認してください!
以外に知られていませんが、同じクレジット会社で同じ支払回数でも、すべてのショップで手数料(金利)が同じでという訳ではありません。最初からショッピング・クレジットのご利用を前提で検討されている方は、月々の支払金額の試算で「払える」「払えない」を判断しがちですが、金利を含めた総支払額は必ず確認してください。
せっかく「お買い得商品」をゲットしたにも関わらず、たまたまそのショップの金利設定が高く、総支払金額ベースで他店の商品と比較した場合、ワンランク上の商品が買えた!なんて事が起こらないとも限りません。
G>衝動買いは禁物です。迷ったらクールダウンしてください!
「安い!」といって飛びついた結果、後になって「安物買いの銭失い」になったのでは洒落になりません。前述の通り「安い商品」にはそれなるの理由があるのが殆どです。また、複数のギターを試す事で、自分の当初求めていた物のイメージがボケてしまう事も多々あると思います。
後で後悔しない鉄則は「衝動買いをしない!」の一言に尽きます。
仮に迷っているものの興味はある・・・というのであれば、その場での即決は避け、ショップにお願いしてHOLD扱いにしてもらい、一度頭を冷やす事をお勧めします。
一晩冷静に考え、やっぱり忘れられない・・・というギターや「夢に出た」ギターは迷わずゲットしましょう!
H>買い逃したギターの事はとっとと忘れてください!
「迷った揚げ句買わなかった」「良いギターがあったがショップに行ったら既に売れていた」もしくは、「事情があってその時は買えなかった」等、気になったギターをゲットし損ねた経験は皆さんも多々お持ちだと思います。それは、その時点では「出会いがなかった」とすっぱり諦めて忘れてください。
ビンテージ・ギターは仕様・サウンド・価格等、すべての面で「1本モノ」で同じモノはありません。
逃してしまったギターへの未練を引きずると、その記憶は次第に美化されご自身の中での存在感が増し、他のどんなギターを見ても「逃したあのギターの方が良かった」という評価になってしまいます。
結果的には新しいギターとの出会いを否定してしまいますよ!
<国内のショップにて通信販売にてご購入の場合>
前述しました通り、ストラトキャスターに限らずビンテージ・ギターを通信販売にてご購入される事自体お勧めは出来ませんが、ご多忙でショップに出向く時間が取れない方もおられると思います。
やむを得ず通信販売にてご購入させる場合のアドバイスは以下の通りです。
実際に現物を手に取って試せない訳ですから、ショップ購入ベースでご説明した前述のA・Bに関しては諦めざるを得ません。但し他の項目に関しては電話等にて詳細を確認する事は可能です。
当店の場合でもメールでのお問合せが多々ございますが、やはり詳細をご確認されたいのであれば、直接ショップにお電話される方が効率的ですし、双方の意思疎通が取れて良いと思います。
またメール・お電話にてサウンド面に関しご質問させる方も多いのですが、正直「サウンド」、特に「個体差」の部分に関しては、ニュアンス的に微妙な部分が多く、また「サウンド」自体を言葉で表現するのは非常に難しく、私自身いつも苦労しております。やはり「サウンド」にコダワリがある方は、時間を作ってでも直接ショップへ出向かれる事をお勧めしたいと思います。
実際に通信販売にてご購入される場合にも、前述のC・D・Fに関しては比較的容易に確認出来ると思います。特に昨今はインターネット社会ですから内部を含めた詳細画像は、ショップの方にメールの添付ファイルにて送付をお願いすれば、お手元のパソコンでご自身で確認が取れます。
通信販売での最大のポイントは、実際に商品がお手元に届いて万が一気に入らなかった場合の対応となります。
よって購入される前に各ショップの「キャンセル&返金」のシステムをご確認され、十分に納得される事をお勧めします。
ビンテージ・ギターの場合、「中古商品」と同じ扱いとなるため、法律的には「クーリング・オフ」の対象外となります。よって「返品」に関しては各ショップのシステムがどの様になっているのかがポイントとなります。
商品が手元に届き「インターネットの画像イメージと違った」「予想よりコンディションが悪かった」「想像した以上に重かった」「ネックの握りが合わない」「想像していた音と違った」等、実際に現品を確認していない以上、気に入らない箇所が発生する場合も多々あると思います。
安い買い物ではないので「気に入らない物」を買うのはかなり抵抗があると思います。その際に「キャンセル」を受けれもらえるか否かはかなり重要なポイントとなります。
「キャンセル&返金」に関しては、その期間・理由の有無・費用負担の範囲等の購入前にしっかり確認して下さい。
またショッピング・クレジットをご利用されての通信販売の場合には、そのクレジットのキャンセル手続きも発生します。その際の費用負担の有無等のご確認も、必ずご契約前にショップにご確認下さい。
<海外のショップ&ディーラーからご購入の場合>
旅行やご出張で海外に行かれ、直接ショップに出向き購入するケースと、ネット等も見た上での通信販売を利用されるケースが考えられます。言葉の問題を除けば国内のケースと同じだとお考え下さい。
但しビンテージ・ギターに精通しているショップとそうでないショップがあるのは事実で、スタッフの説明を鵜呑みにするのではなく、必ず検品させてもらい、最終的にはご自身で確認をして購入をご決断下さい。
また、購入されたショップに保証体制があった場合でも、海を隔てた距離を考えると実際には「買い切り」とお考えになっていた方が良いと思います。
アメリカの場合には、国内も広くビンテージ・ギターに関しても「通信販売」が日常的に普及していますので、各ショップ&ディーラー共に「キャンセル&返金」のシステムは日本以上に明確化されています。
それでも購入される前には必ず条件・期間・費用負担等を確認される事を忘れずに行って下さい!
商品が気に入らず返品を受けて貰えても、通常は往復の運賃及び送金手数料は買主負担ですし、通関手数料及び通関消費税、為替差損は確実に発生します。通常10,000ドル程度の買い物で約10~12万円の費用の持ち出しになります。「気に入らなければ返品すればよい!」と安易に考えるのは禁物ですよ!
10)「後悔しないビンテージ・ストラトキャスター選び」実践編
長々と書かせて頂きましたが、私の過去の自身の経験とお客様との接客を通じて感じた事をベースに、私なりのビンテージ・ストラトを1本絞り込む秘策は以下の通りとなります。
A>ビンテージ・ストラトに関する最低限の基礎知識を取得する
54年製からの基本的な仕様変遷概要程度は知識として持っていないと、ビンテージ専門店のスタッフと話されても会話が成り立たない可能性があります。
私の経験として、以下のムックを買われて読まれれば最低限の知識は取得出来ると思います。
<お奨めムック:基礎知識編>
・Fender Stratocaster (リットーミュージック刊 ¥2,100)
・ストラト・セブンティーズ (シンコーミュージック刊 ¥1,860)
<お奨めムック:更に詳しく知りたい方向け>
・ストラトキャスター・クロニクル 洋書の翻訳版 (シンコーミュージック ¥6,300)
・ギターグラフィック Vol.6 (リットーミュージック 絶版)
B>自身の求めるビンテージ・ストラトのイメージを絞り込む
ビンテージ・ストラトのサウンドに惚れこんでいる方の場合は、期待する「サウンド」のイメージを好きなミュージシャンの使用機材や音源から絞り込みましょう。
同様に、どの程度のコンディションやパーツ交換は許容範囲か・・・等のご自身のターゲットを具体化してください。
またコレクションとして”一生モノ”のストラトをゲットしたい方は、カラーなり期待するコンディションを絞り込みましょう。
C>絞り込んだ自身のイメージのストラトの購入予算及び購入方法をイメージしましょう
ネットや雑誌広告等をマメにチェックし、自身のイメージしているビンテージ・ストラトが幾ら位で販売されているかのリサーチするのは良いと思いますよ。
その上でご自身の購入予算を決めて下さい。
また、現在所有ギターを下取りに出すのか、現金で購入するのか、ショッピング・クレジットを利用するのか・・・等をイメージするのは大切ですよ!
D>実際にショップに出向き、事前に絞り込んだご自身のイメージと現品との確認を行う(サウンド、ネックのグリップ感、持った時のバランス等)
以下は手前ミソで恐縮ですが、お客様が当店にご来店された場合と仮定して話を進めさせて頂きます。
但し、何度も書かせて頂いている通り、基本的に「購入が前提であり、気に入ったら今日購入する」事を前提とさせて頂きます。
数か月後にお金が入るので「購入前提」だ・・・と言う場合には、実際に購入資金が準備出来てからショップを回るのがエチケットだと私は考えます。
イ)先ずはショップ内をゆっくり見て廻り、商品の在庫状況や価格帯、自身のイメージしたストラトの有無等を確認しましょう。
ロ)イメージした商品があった場合、スタッフに声を掛け実際にギターを手に取り、重量やバランス、ネックグリップ感等を確認すると共に、詳細のスペックに対する説明を受けましょう。
・事前に取得している知識に対し、スタッフから受けた説明で疑問が生じた場合には都度質問し、疑問点を一つずつ解決させていきましょう。
ハ)手に取ったストラトの重量なりバランスが気に入った場合、試奏を申し出て実際に音を出しましょう。
・音を出す時は自分のイメージに近いアンプを選択し、恥ずかしがらず大きな音量でプレイして下さい。
(試奏ルームに置かれているマッチレス・アンプをご希望される方も多く居られますが、ビンテージ・ストラトの試奏の場合、アンプの持っているキャラクターが強く、余りお勧めではありません。仮に普段お使いのアンプがマッチレスの場合には、先ずはフェンダーやマーシャルで出音を確認し、最終的にマッチレスでの出音を確認する・・・と言うのが良いと思います。)
・アンプはクリーンなセッティングで、歪みはエフェクターで作る方は、同様に試奏用のエフェクターの使用を申し出てプレイして下さい。
・色々試しそのギターが自分の好みか否かを判断しましょう。
ニ)弾いた時の感想を率直にスタッフにお話下さい。その際に自身でお持ちのイメージとの差異等も併せてお話下さい。
・お客様の感想に従い、スタッフがイメージしている音を想像し、同年代の他のストラトや年代が異なるストラトをお勧めしますので再度ご自身で試してください。
・場合によっては他のアンプでの試奏をご提案させて頂く場合もあります(先入観に捕われず、色々トライしてみて下さい)
ホ)ご自身のイメージに近い年代が絞り込まれたら、その同年代のストラトを複数本弾き比べてして個体差を体感すると共に、更にイメージに近いギターを絞り込んでください。
・複数本のストラトを弾き比べる際の注意点
同じアンプ、同じアンプ・セッティング(アンプ・ボリューム、イコラインジング)で行ってください。
同時にチェックするのは2本が理想(最大多くても3本程度)
チェックした2本の内どちらが好きかを判断し、好きな方を残して気に入らなかった方を別の1本にチェンジし再度弾き比べを実施してください。(2本の判断基準は、ご自身の「好き」「嫌い」で十分だと思います)
以上の様に2本ずつ弾き比べ、最後に残った1本と、弾き比べを行った他の数本の中で記憶に残った1本を再度弾き比べ、残った1本が一番のお気に入りか最終確認してください。
(最終的に残った2本を別のアンプを使って音出しする事もお勧めです・・・例>デラックス・リバーブ⇒マーシャル等
以上の様に複数本の中から時間を掛けてご自身のベストを選べば、後悔はしないと思います!
繰り返しますが、ビンテージ・ストラトの場合、皆さんがご想像されり以上に1本毎の個体差が大きいです。必ず購入をご決断をされる前に、複数本のストラトの弾き比べを行ってくださいね!
皆様に「自身のベスト」と呼べる最高のギターとの出会いがある事をお祈りしております。
追記2012.05.22:Hardtail(トレモロ・レス)のストラトキャスター
ストラトキャスターと言えば、3ヶのシングルコイルPUの組合せによる多彩な音色と、シンクロナイズド・トレモロ装着をセールス・ポイントに1954年に発売されましたが、発売時の54年からトレモロなしの仕様(通称:Hardtail・ハードテイル)も併せて発売されています。
また、その後も60年代・70年代を通じ、トレモロ・仕様のストラトキャスターと共存し続けています。
トレモロ仕様が、6本のスクリューと、Body裏に大きなザグリを加工を施し、5本のスプリングを介してトレモロがBodyに固定されているのに対し、トレモロ・レス仕様は、Bodyに3本のネジでブリッジ・プレートが固定され、テレキャスター同様に弦はBody裏より通す方法が採用されています。
言い換えれば弦の振動を、トレモロ仕様がスプリングを介してBodyに伝えるのに対し、トレモロ・レス仕様は弦を裏通しでブリッジ~ネックにダイレクトに伝わり、振動すなわち鳴りが異なります。
判り易い表現をすれば、トレモロ仕様が5本のスプリングを介してBodyに弦の振動を伝える構造上、スプリングがリーバーブ効果を生み出し、生音を含め僅かではありますが空間を意識させるトーンが特徴となります。
反面トレモロ・レス仕様の場合、弦は前述の通りBody裏通しの関係で、弦の振動が直接Bodyに伝わり「Body鳴り」を体感出来ます。
このBody鳴りは、テレキャスターに相通じるモノで、特に4~6弦の低音弦の鳴りは経験すると意外に病みつきになると思います。
但し、ストラトキャスターの場合、トレモロ・アームの開発に一度失敗し、当初予定の1953年発売を遅らせた経緯がある通り、「シンクロナイズド・トレモロ」が代名詞となります。またエリック・クラプトンを代表格に、「トレモロは演奏上まったく使用しないが、そのスプリングを介したリバーブ感が好き」と言う事で、トレモロ・レス仕様ではなく、敢えてトレモロ仕様のブロックを動かない様に固定して使用するミュージシャンも多く存在します。
トレモロ・レス仕様は、各楽器店やミュージシャンから「フェンダー・セールス」を介してのオーダーが基本で、その生産台数は極めて少数となります。
当然Body加工も専用のテンプレートを用いるため、フェンダー社内では通常のトレモロ仕様とは別に製造・管理されていました。その生産効率を維持するため、オーダーが入った時点で、Bodyはある程度まとまった数量を一度に加工し、在庫したと考えられます。結果としてBody・Neck共にデイティングが入っているPre-CBS期の製品を見ても、BodyとNeckのデイティングがかなり離れているギターが少なくありません。
また、56年中頃にはアッシュBodyからアルダーBodyに変更を仕様変更されたにもかかわらず、57年製トレモロ・レスにアッシュBodyという仕様も存在します。
前述の通り、トレモロ・レスのハードテイルは存在台数は少なく、通常のビンテージ・ギターの法則に則ると、レア物として価格が高い・・・となりますが、残念ながらストラト=シンクロナイズド・トレモロの認識はマーケットに深く浸透し、また多くの皆さまがトレモロ付きを望まれている事もあり、同一年式のトレモロ仕様に比べ、実際にはかなりかなり安くなるのが普通です。
トレモロ・レス仕様を意識して探されても本数が少ないため、殆んど見付からないとは思いますが、仮に出てくれば、トレモロ仕様に比べて割安なプライス設定になっている反面、独特なBody鳴りという魅力もあるので、普段からトレモロアームは使わない・・・といい方であればTRYしてみる価値はあると思います。
但し「安く買える」という事は、将来手放す時にも、「トレモロ仕様に比べて安い評価となってしまう」という点はお忘れのないように!
追記2012.05.22:Lefty (左用) のストラトキャスター
左効き用のストラトキャスター・・・ビンテージ・ストラトキャスターの場合、1954年製は過去にお目に掛った事はありませんが、1955年製からは間違いなく存在します。
ビンテージ・ストラトキャスター専門の当店の場合、1956年製から70年代までの間で10数本の在庫を保有してはいますが、残念ながら右用に比べればその在庫本数は少なく、同年代の仕様を弾き比べるという環境にはなっておりません。
また、右用に比べ販売価格は高く設定されているのが一般的で、反面手放す際には、残念ながら通常の右用に比べ安くなってしまうのが実情となっています。
左効きの方でもギターは右でPlayされる方も多く、結果的に左用のギターの需要が極端に少ない・・・という「需要と供給のバランス」結果の必然で仕方のない事だとご理解ください。
左効きの方は、中古楽器も滅多に流通していない・・・とお嘆きだと思いますが、ビンテージ・ストラトキャスターも同様に、滅多いお目に掛れません。
70年代の3ボルトNeck以降の場合、年に数本の商品が出回りますが、50年代・60年代となると、ビンテージ・ストラトキャスター専門の当店以外では、先ずお目に掛ることはないのではないでしょうか・・・
真剣に購入を考えた場合には、ショップにお願いして探して貰う・・・という方法が一般的ですが、その場合残念ながら価格はかなり高額となり、また仮に見付かった物は、基本的にはその商品を購入するのが前提となり、試して音が気に入らないから買わない・・・という訳にはいかないのが現実です。
仮にショップに現品があり、試奏が出来る状態で想定しているご予算内であれば、迷わずTRYされ、納得出来れば購入される事をお勧めします。何故なら、前述の通り極端に流通量が少ないため、買い逃した場合の「次」はまず期待出来ないからに他なりません。
納得出来るビンテージ・ストラトを1本所有出来ていれば、以降自身で所有されるギターより更に良いモノが出て来た際には、現在所有のギターを下取りに出してアップ・グレードされるのが良いと思います。
また、ジミー・ヘンドリックの逆バージョン・・・という訳ではありませんが、右効きの方が、左用のビンテージ・ストラトを敢えてPlayしようとされる方も居られます。左用のストラトを右用として反転させてPlayする・・・70年代にエアロスミスのジョー・ペリーも70年代のブラック・メイプルNeckの左用ストラトを右用にしてライブで使用していましたね!
私自身、ジョー・ペリーの格好良さに憧れていたので、当然同じ様に左用のストラトを入手し、右用に改造して使用した経験はあります。
自身の経験からして、お勧めは出来ません(笑)
先ず、左用のストラトを右で使用する場合、ナットを交換し当然ですが、セッティングを変更する必要があり、意外に知られていませんが、3ヶのポットの回転方向が逆となるため、内部配線もやり直す必要があります。
またライブ等で使用する場合には、1弦側のホーン部分にストラップ・ピンを移植する必要があります。
以上の改造を行い、実際にストラップを使用して肩に掛けて見て下さい。
鏡に映った自身の姿は滅茶苦茶にカッコ良いのは間違いありません・・・反面Playを始めると、その弾き難さに閉口する事間違いありません。
まず、3ヶのノブがピッキングする右手に当ってしまいます。その結果Playしている最中にVolポットに手が干渉してVolが下がってしまう・・・という事象が発生します。解決策として一般的なのが、回路をマスターVol&Toneに改造し、3ヶあるノブを2ヶにして、通常Volがある位置をダミーにしてポットをずらす方法があります。
以上の改造を行っても、やはり弾き難さは基本的には解消しないと思います。
バンドにリード・ギターを担当される他のメンバーが居て、基本はバッキング中心だったり、単音のソロは弾かない・・・と云うのであれば問題ありません。
反面、単音でもバリバリにPlayしたている・・・と云う方の場合、1弦側のホーンの切り込み部分が浅いため、手が入らずに、エレキ・ギターで良く使われるAやEのKeyでのフル・スケールが弾けません。
当店でも安めの70sのレフティー・ストラトが入荷し、過去何回も右用に改造して販売して来ましたが、ご購入前に「凄く弾き難いですよ!」と念押ししましたが、皆さん「大丈夫です!」とおっしゃって購入され、殆んどの方々が「やっぱり弾けませんね・・・」と言って半年~1年以内に売却されています。
最後に、以上の様に左用のギターを右用で使用した結果、その後ナットや回路に手を加えオリジナルの左用に戻した場合でも、1弦側のホーン部のストラップ・ピンの痕は残ってしまいます。
当店に左用のビンテージ・ストラトが入荷した場合、お電話・メールでのお問合わせで一番多いのが「1弦ホーン部のストラップ・ピン設置の履歴のありなし」となります。また、左効きの方の場合、前述のストラップ・ピン増設痕は嫌われる傾向が大となりますので、仮に左用を一度右用に改造してしまった場合、手放す際にはかなり安くなってしまう事を覚悟してくださいね!
<2014年4月20日:追記>
ビンテージ・ストラトキャスター購入後の付き合い方
当店ににてビンテージ・ストラトキャスターをご購入頂いた際には、当店独自の保証書「Inspection Sheet」の内容をご説明させて頂きと共に、基本的な日々のお手入れ方法等をご説明させて頂いております。
まず前提に、本コラムの冒頭でも書かせて頂きましたが、ビンテージ・ストラトキャスターに限らず、ビンテージ・ギターは、製造されてから40~60年が経過し、その間色々なオーナーを経て弾き続けられてきた「中古楽器」である・・・という前提は忘れないでください。
ビンテージ・ギターは、現行商品の数倍~十数倍の高額商品となり、「高額商品故に完璧であって当然。何処も問題があってはならない!」という概念は当てはまりません。ビンテージ・ギターが高額である由縁は、「骨董的な価値」も依るものであって、ギター本来のクオリティーや、現状の「Playする」と云う観点でのクオリティーとは殆んど関連しません。(極端な例ですが、1954年製のストラトキャスターのコンディションの良い個体があり、そのすべてのPUが断線し音が出ない状態だった場合でも、修理等の手が一切加わっていない個体だった場合には、かなり高額な価格設定の商品となると思います。)
また、実際購入されて以降も「メンテ・フリー」とはいかず、定期メンテを含め然るべき維持費が掛る事は念頭に置いて、ご購入を検討して頂きたいと思います。
と言って、凄くナーバスになる必要もありません。特にストラトキャスターに代表されるフェンダー製のビンテージ・ギターは基本的に丈夫に作られていますので、ご安心ください!
「Playされた後の日々のちょっとしたお手入れと、日々の気遣い」をして頂けるだけで、より長く良い状態でPlayして頂けると思います。
当店ににてビンテージ・ストラトキャスターをご購入頂いた際には、当店独自の保証書「Inspection Sheet」の内容をご説明させて頂きと共に、基本的な日々のお手入れ方法等をご説明させて頂いております。
先ずは、その際にお話しさせて頂いている、日々のお手入れを中心に以下書かせて頂きます。
1)弾かない時も弦は緩めないでください
雑誌のギター・メンテナンス関連の記事に、「弾かない時は、ペグを2~3回緩めた状態にしておきましょう」的な記載をよく目にします。
近年モノのギター&ベースの場合、ネック材の関係で上記表現は適切だと思いますが、ことビンテージ・ギター&ベースの場合、「弦を緩めての保管」は禁じ手の一つとなります。
ネックに対し常に一定のテンションを掛け続ける事で、一定の状態がKeep出来る・・・簡単に書いてしまうとこうなります。
掛っているテンションが弱まれば、気は楽な方向に動き、結果的に長時間弾かれずにケースに入れられて保管されていたビンテージ・ギターのNeckが「逆反り」してしまった・・・良く聞く話です。
フェンダーのギターに限定して書かせて頂きますと、ネックに仕込まれている「トラスト・ロッド」は、実際には「逆反り」に対しては殆んど効果がありません。
レオ・フェンダーが50年代初頭にボルト・オン式のデタッチャブルNeckを開発・採用した経緯には、ミュージシャンの楽器の維持・管理費を軽減する目的も含まれていました。要は過酷なツアーやアクシデントでギターのNeckを破損させてしまった場合には、Neckをパーツの一つ考え、そのNeckを交換する事により、リペア期間を短縮する意味合いが込められていました。
同様に、ミュージシャンが日々使用する環境で起こり得るNeck不具合として、当然ですが「環境等の変化によるNeckの反り」が挙げられます。皆さんも経験があると思いますが、通常使用環境で起こり得るNeckの反りの大半が「順反り」となります。反面「逆反り」に関しては、弦を張らない状態で放置したり、弦を緩めた状態で管理した・・・等の要因に起因します。
ミュージシャンの日々の不具合対応を最優先した結果、Fenderの場合「順反り」に対するタフネスを持ったロッドの仕込みとなっている訳です。
反面、過度な「逆反り」に対しては補修パーツとしてのNeck交換を行って対処する事が前提となっています。
Neckのパーツ供給・・・当然ビンテージ・ギターと云う世界にはあり得ない事です。
よって一旦「逆反り」となってしまったNeckを弾ける状態に戻す事は、リペア作業の中でもかなり大変な作業となり、当然ビンテージ・ギターが持っている”骨董的な価値”も大幅に損なわれてしまいます。
よって、絶対にNeckを「逆反り」させない事は鉄則であり、常にNeckに一定のテンションを掛け続ける、すなわち「弾かない時も弦は緩めない」事となります。
仮に一定のテンションを掛け続けた結果若干Neckが反ってしまったとしても、それは100%「順反り」のため、一般的にはロッド調整にて簡単に対処出来ます。また、50年代・60年代のFenderが出荷時にギターに張った弦のゲージは、現在皆さんが普通に張られている0.10~0.46等の弦より全然太い弦が張られていますので、心配はご無用です。
2)Playし終わったあとは軽くカラ拭きしてあげてください
ビンテージ・ストラトキャスターは、54年の誕生以来、81年製に至るまで、Bodyのトップ・コートはニトルセルロース・ラッカーが使用されています。
既に皆さんご存じだと思いますが、ニトルセルロース・ラッカーは非常に繊細でデリケートな塗料で、汗等の水分は塗膜を傷める事になります。
弾き終わった後に、ノン・ポリッシュのクロス等でBody・Neckを軽く拭いてあげる習慣をつけてください。
またカラ拭きする際には、拭く布の繊維痕がBodyに細かい傷を付ける事も多々ありますので、なるべく上質のクロス等を選択してください。
3)弦を交換する際にはプラスアルファのお手入れを!
弦交換の際には、単純に弦を交換するだけではなく、以下のお手入れを一緒に行う習慣を付けてください。
*クロスでピックガードやピックアップ・カバーを拭いてあげる。
*綿棒等でブリッジ・サドル近辺に溜ったホコリ等をクリーニングする。
*指板部分に付いた手垢等を軽く拭いて取り除く。
*ローズNeckの場合には、指板部分のみにレモン・オイルもしくはオレンジ・オイルを塗って潤いをもたしてあげる。
(指板部分にオイルを塗布することで、フレットの酸化防止の効果もあります。)
4)ギター・スタンドを利用する場合には、ゴムとの干渉に十分気を付けてください
皆さま既にご存じだとは思いますが、ギター・スタンドの使われているゴムは、Body&Neckと長時間接する事で塗装を傷めてしまいます。
もちろん短時間スタンドにビンテージ・ストラトを置いても、塗装が傷む事はありませんのご安心ください。
ご自宅等で常に手に取ってPlayを楽しむために、ギター・スタンドに愛器を置く場合には、スタンドのゴムが直接ギターのBodyやNeckに触れない様に、楽器店で売られている「スタンド・ブラ」を装着するか、布等をスタンドのゴム部に巻く等の配慮をお願い致します。
5)温度・湿度には気を配ってください
温度・湿度を一定に保つために、「24時間空調管理」が出来るのが理想ですが、実質的には不可能だと思います。
<2023年4月7日:追記>
54年製ストラトキャスターについて考える
2023年時点で、ビンテージ・ストラトキャスターの価格高騰は凄まじく、私自身「どこまで上がるのか?」と頭を抱えている毎日です。
昨今ストキャスターに限らず、国内でビンテージ・ギターを手放す方が減り、本家のアメリカでの価格高騰に加え円安が追い打ちをかけている状況なので仕方がないのかも知れません。
そんな中、やはりビンテージ・ストレアとキャスターが好きな方々にとって「何時かは54年製ストラトキャスターをコレクションに加えたい」と強くお考えの方が多く居られ、”King
Of Stratocaster”と言われている状況は30数年前からまったく変わっていません。
では、何故54年製ストラトキャスターが「ビンテージ・ストラトキャスターの究極」と言われるのでしょうか?
もちろんストラトキャスターの誕生初年度である点が最大の理由ですが、ギブソン・レスポールの場合には、「King Of Les Paul」は疑う余地なく59年製のサンバーストで、初年度の52年製は昔からマーケット的にはそれ程評価されていません。
反面ストラトキャスターの場合、30数年以上前にまだ60年代初期のスラブ・ローズNeckのサンバーストのストラトキャスターが70万円前後で販売されていた時点で、54年製サンバーストのストラトキャスターは既に250万円程のプライスが付いていて、以降も常に”別格”な高いプライスが付いていました。
最大の理由は、54年製のストラトキャスターで、既に仕様は一種の「完成型」となっていて、反面54年製しか持ち合わせていない”スペシャル”な点を数多く持ち、更には最初期・初期・中後期仕様を含めても700~800本程度しか生産されていないその希少性を持った存在だからに他なりません。
ここで54年製ストラトキャスターしか持っていない”スペシャル”な特徴について書かせて頂きます。
*丸を帯びたヘッド・シェイプ
ネック・グリップ部からヘッドに流れていくシェイプや、ヘッド全体の面取りが丸みを帯びた官能的な形状で、55年製以降のヘッド形状の様なシャープさは感じられません。
*鋭角なシェイプを持ったBodyの1弦側ネック・ジョイント部分の側面の形状
丸みを帯びたヘッド形状とは対象的に、1弦側ネック・ジョイント側面のBody形状は”ピン角”仕様となっています。
*巻きが甘く低出力の”Shot G”ブラックボビン・ピックアップ
3弦ポールピースが4弦ポールピースより低く設定されている通称「Short G」と呼ばれるPUは、外観上では55年にも存在しますが、同じ「Short
G Black Bobbin PU」でも54年製と55年製はまったく別物となります。
54年製オリジナル「Short G Black Bobbin」PUの最大の特徴は、そのコイルの巻きで、直流抵抗値を測定すると、N極着磁の50s
ブラックボビンPU(55年製 Short G PUを含め)が5KΩ後半から6KΩ前半の数値を示すのに対し、5.5KΩと明らかに抵抗値は低く、その抵抗値の差がそのまま”サウンド”にも顕著に現れます。
55年以降のPUはパワフルで”ガツン”とラウドに鳴りますが、54年製オリジナル”Short G”ピックアップは、Mid & Lowに特化したキャラクターは55年製以降と同じですが、若干パワー感に欠けるため”ガツン”と鳴るというより、50年代後半以降のローズNeckに近い、少し粘る様な得も言えない「絶品なトーン」を醸し出します。このMid・Lowに特化しローズNeckに近い”粘り”のサウンドこそが、54年製ストラトキャスターの最大の魅力と言っても過言ではありません。
私はStrato-Crazy開業時より「54年製ストラトのトーンは別格」と言い続けて来ましたが、いつの時代での54年ストラトキャスターの価格は他のストラトとは大きく異なり高かったため、「54年のストラト是非弾いて!」と言えなく歯がゆい思いをし続けて来ました。
*裏面の弦通し穴が丸穴のトレモロ・バックプレート
55年製の最初期仕様で、丸穴バックプレートが装着された個体を過去1本のみ見た事がありますが、反面54年製は100%丸穴バックプレートが装着されています。
その他に、最初期の54年はシリアル#が0101~0115の115本のみ、そのシリアル#がプラスチックのトレモロ・バックプレートの上部に打刻され、ネックジョイント・プレートにはシリアルナンバーの打刻がありません。(通称バックプレート・シリアルの54年)
このバックプレート・シリアルの54年製ストラトは115本しか生産されず、コレクター垂涎の的となっています。当Strato-Crazyでも20年間で数本の扱いはありますが、常に探し続けて」いますが残念ながらこの10年近く入手出来ていません。
また初期~中期に掛けて、シリアル#の打刻はネックプレートに移行していますが、通称「Short Skirt Knob」&「Football Swich
Tip」と言われ、明らかに以降のモノとはノブとSWチップの形状が以降の仕様とは異なる54年ストラトが存在します。(当然ですが、前述のバックプレート・シリアルの初期54年製ストラトも同じノブ・SWチップ仕様となっています。)
同じく「ショートスカート・ノブ」&「フットブール・SWチップ」が装着された初期54年製ストラトは、以降の「センター・ポケット・ツイードケース」とは異なり、ギターの方にをした通称「フォームフィット・ケース」と呼ばれる特殊な形状のケースにが付属しています。
この「ショートスカート・ノブ」「フットボール・SWチップ」「フォームフィット・ケース」を有した54年製ストラトを一般的には54年初期製として以降のモノとは区別し、コレクターの垂涎の的となっています。
「ビンテージ・ストラトキャスター専門店」の看板を上げている当店とて2002年に開店以来守り続けているポリシーの一つに「絶対に54年製ストラトキャスターの在庫を切らせない」と云うのがあります。
仮にカスタムカラーのストラトにカラー・チャート上に存在するカラーの在庫が無くても、55年~81年製ストラトのすべての年のストラトの在庫が無くても仕方がないと思っています。反面「ビンテージ・ストラトキャスター専門店で初年度の54年製ストラト」の在庫がない」とは決して言いたくはなく、またあってはならないと考えて今日に至ります。故に2002年の開店以来、貰った54年製ストラトのオファーは断らずすべて対応して来ました。当然前述の通りいつの時代も54年製ストラトキャスターは高額なため、入荷した商品が右から左に短期間で動くことはなく、結果として常に複数本の54年製オリジナル・サンバーストのストラトキャスターの在庫を持っていられています。
世界広しと言えど、54年製オリジナル・サンバーストのストラトキャスターを弾き比べ、選んで購入頂けるのはStrato-Crazyだけだと自負しています。
2002年の開業以来、お陰様で延べ250本以上の54年製ストラトキャスターを扱わせて頂きました。
その経験上言える事は、同じ月のNeck・Bodyであってもかなり個体差がある・・・と云う事です。アッシュの目の取り方、重い個体に軽い個体とかなりのバラツキがあります。極論すればフェンダー・セールスがフェンダー社に正式に発注する54年10月以前は、1本・1本が「試作品」と言っても過言ではないと思います。
ビンテージ・ストラトキャスター好きの方々が「何時かは54年製オリジナル・ストラトキャスターをコレクションに加えたい」とお考えになっていますが、最後ご購入に際しての私の私見としての注意すべき点を書かせて頂きますね!(あくまでも私見です。参考程度にしてください。)
既に約70年前に700~800生産された54年製ストラトキャスター・・存在しているだけで奇跡で、更に・いつの時代でも高額で、今後もその価格は下がる事はなく、間違いなく上がり続けると断言できます。但し「何時かは54年製ストラト」との強い思いを持った方々が自身のコレクションとして入手を検討される故に、「Playするために買う」と云う感覚とは明らかに異なります。
70年近い歳月が経過し、完璧な状態で現存する個体自体が少なくなっています。ハンダ・バージンのフル・オリジナルな個体であれば申し分ありませんが、仮にハンダに手が加わった痕跡が見られる個体でも、100%オリジナルをKeepしていれば問題はないと考えます。
反面、以下の仕様的な問題を抱えた54年製ストラトには手を出されない事をお勧めします。
*ピックアップが「54年製オリジナル "Short G"ブラックボビン」から別の年代のオリジナル・ブラックボビンPUに交換されている個体
*ピックアップが「54年製オリジナル "Short G"ブラックボビン」ながら、リワインドされている個体
前述の通り直流抵抗値の低い54年製オリジナル "Short G"ピックアップ故の54年の独特なサウンドとなります。その今回であるピックアップが年代ズレやリワインドされていれば、私としては正直「54年製ストラトの存在価値の半分は失ってしまっていると考えます。
*丸穴のオリジナル・トレモロ・バックプレートが欠品している個体
*ベイクライト製トレモロ・チップが付いたオリジナル・トレモロアームが欠品している個体
*オリジナル・フォームフィットケース、もしくはオリジナル・センターポケット・ケースではなく、年代ズレもしくはリイシュー・ケース付属の個体
10数年前であれば、1・2年死ぬ気で探せば、ピックアップを含め54年製ストラト用のオリジナル・パーツやケースを探すとこは可能でしたが、この数年先ず市場に出回る事はなくなりました。
反面54年製ストラトの価格は上昇の一途を辿り、コレクションに加えようと考える方々の要求値も「高いのは仕方がない。そん分完璧なモノが欲しい」と上がっています。
もちろん前述の不具合を持った54年製ストラトが「Player's」的なプライス設定であれば問題ありませんが、然るべき価格設定となっていた場合には、仮に購入されご自身で問題個所をパーツ・ケースを探して時間を掛けてオリジナルに戻すと云う事は不可能です。故に将来売却を考えた際に誰もそのストラトに興味を持って貰えず、安価でなければ売却出来なかった・・・という結末に陥るのは目に見えています。
以前は54年製ストラトの売却のお話を頂いた際には、お断りする事なく購入させて頂き、その後ストックの54年のオリジナル・パーツやケースにてレストアし、オリジナルに戻す作業をしその後販売する事もしていましたが、数年前からは前述の仕様上に問題を抱えた54年製ストラトに関しては、パーツやケースの在庫に限りはありますし、問題を抱えて仕様の54年はバーゲン・プライスを設定しない限り売却は難しいため、買取りオファーのお話はお断りする事にしております。
皆さんが納得できる54年製ストラトであれば、コレクションとしての価値も不動で、絶対にお勧めしたい究極のビンテージ・ストラトキャスターとして今後もお勧めしたと思います。繰り返しますが、「ビンテージ的な価値」も当然凄いですが、「サウンドも別格」ですよ!